ズルイ、正直自分はズルイと思い日々反省する。
又、ウソつきであり、ホラ吹きである。
「反省だけならサルでも出来る」と高名な文章家が書いたがサル以下であろう。
学問のない人間にとって一日一日を乗り切るには「一夜漬け」という漬物を作らねばならないのだ。講釈師、見てきた様なウソつき。というが正に講釈師と同じなのだ。
人にこの意味知ってると一夜漬けの話をする。相手は知らないとか、知らなねぇよとか、知らないわとか、知んねえべえとか言えば実はこうなんだよと話す。
深くその先を聞かれるとウヤムヤ、ムニャムニャにする。クイズなどは知っている事だけ出すのだ。嫌な奴だなと思われているのは充分承知の上で講釈師を演じるのだ。
時々この一夜漬けの知識がビンゴとなり大勝負に勝つ決め手になる事がある。
一夜漬けでも漬けた者勝ちという訳だ。街を歩き、人間を見物し、楽しそうな相手とみれば話をはずませ人の迷惑を顧みず漬物のネタを探す。
歯医者さんでアーンしながら治療を受けている間も何か思いつくと水しぶきを浴びながら歯の手入れをしてくれ純粋な女性(多分バージン)歯科助手さんを困らせる。
歯医者さんには秘密を知られているので頭が上がらない。(銀座鳩居堂裏の深水歯科は素晴らしいですよ)
芸能人がヘアメイクの人を大切にするのは美人だけどハゲがあるとか、イケメンだけど付け毛とかみんな知られているからだ。
本屋さんは一夜漬けのネタの宝庫だ、小一時間ほど店内を歩き本のタイトルや表紙を見ていると邪な講釈師の血が騒いでくる。デパ地下の食品売り場も宝庫だ。
勝負をかける相手が好みそうな料理のコースを考えるのだ。
前菜からデザートまで。美しいケーキを見ればそれを口にする女性のセクシーな姿や大声を上げて喜ぶ子供達の顔が浮かぶ。塩せんべいや歌舞伎揚げを見るとおじいちゃん、おばあちゃんの顔が浮かぶ。お総菜コーナーに行くと手料理を怠けている人達の姿が浮かぶ。
一人暮らしの女性の生活を垣間見る。チンして食卓に出されるコロッケやメンチを口にする主人の顔が浮かぶ。オーイソースなんていうと、自分で出してなんて言われてお終い。私にとって勝負をかける相手とは一夜漬けを買ってくれる大切なお客様だ。
その人達のお陰で今日まで食べ繋いで来れたのだ。
デパ地下で絶対近づかないコーナーがある。漬物コーナーだ。
ココへ行くと自分の一夜漬けがバレてしまうからだ。さて家の中から本が全て無くなった(断舎離)ネタが浮かばない。深夜で本屋もデパ地下もやっていない。
しかし12時間後どんな事をしても一夜漬けを作り上げていなければならない。
一睡もしなくても相手にはさとられない様ずっとむかしから知っていたかの様に特上の漬物をひけらかすのだ。そして終了と同時に強い自己嫌悪に陥るのだ。
講釈師が一席終わった後、楽屋でガックリしている様に。