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2011年7月22日金曜日

「昴とオシッコ」


ボサボサの白髪、シラケたジーンズにシワシワシャツ、それに灰色シマシマのベスト、小さな体にデイバッグで夜の銀座二丁目の裏街をトボトボ歩いてる。先夜で出会う事三度目だ。誰かに似ている、いや違う、70歳以上に見えるしあんなにみずぼらしくはないだろう。

なんていったってあの人は「チャンピオン」なんだから。


そして四度目、今度はジーッと見た。あっ、やっぱりあの人だ。

谷村新司だ。名曲を連発したあの「アリス」のリーダーだ。


「昴」ではないかいと会社に行ってスタッフにいうと直ぐ前の高層マンションに引っ越して来たとか。立川談志師匠もいたマンションだ。師匠はどこぞへ越して行ったらしい。


想像するに大阪と東京との行ったり来たりがきつくなり谷村新司さんは東京に一室を持ったのだろう。いやもしかしていい女性と、いやそういうやましい事はしない筈だ。


でも趣味はビニ本集めとか言っていたし、アダルト大好き、下ネタ大、大好きといっていたしと思った。確か谷村新司が45歳位の時お正月の新聞のコラムにこんな事を書いていた。

その日のステージに白の上下のタキシードで熱唱をしていた。コンサートも中盤へ、休憩時間にトイレに言って小用をした。そしてステージへ満員のお客さんから拍手の渦マイクに向かったその時、しっかりゆすって切ったはずのおしっこがボソッと漏れてしまった。ヤバイと思ったが局部はおしっこで濡れてしまった。白いタキシードに黒いシミ、仕方なく左手と右手を使い隠しつつ「昴」を歌ったとか。


その日自分が老人になってしまった事をしっかりと自覚したそうだ。

私は「アリス」の大ファン、中でも「チャンピオン」は大好きであった。

立ち上がるな もうこれで充分だ おお神よこのフレーズの部分が自分の人生と重なり合ったからだ。



銀座二丁目で出会う老人はしょんぼりとした丸干しの様だけどステージに上がると別人となる。さすがプロフェッショナルだ。「冬の稲妻」も良かった。「いい日旅立ち」もいい。


バッグの中には何が入っているのだろうか。ビニ本、アダルトビデオ、いや違う違う、きっと名曲を生むためのスケッチノートだろう。いいアイデアがザックの中にザックザック入っている筈だ。


最新のCDアルバムは「今、伝えたい」という。

民族楽器とのコラボレーション新曲「スキタイの歌」はアジアとヨーロッパには境目がない、そんな思いを込めているとか。今度会ったら一杯飲みに行かないかと誘ってみようと思う。


高層マンションの斜め前があの有名な落合務シェフのイタリアンレストラン「ラ・ベットラ」。そこは予約が取れないので「ラ・ベットラ」の前の「銀つね」へ。おばちゃんとクラシックダンス好きの手がガタガタ震えるおじちゃんがやっている地下の飲み屋さん。今頃珍しく赤いウィンナー焼きがあるのが嬉しい。おじさんなんでそんなに震えてるのと聞いたら私が恐いからだとか、ウソーと言った。


最近疲れとストレスからか私も手がかなり震えた。企画イベントをやり遂げたら殆ど震えなくなった。ある夜「銀つね」で若い者と飲んでトイレに行って小用をした。その時私も谷村新司の様になりつつあるのを知った。

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