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2013年2月15日金曜日

「あるアンケート」




私もあなたも明日殺人犯にならないとは決して断定できない。
ある哲人は“人はみな等しく狼である”といった。
そう人間は動物である以上生きるためには手段を選ばない。

仮に五人の人間が離れ小島に流れ着いた。
そこには食べ物がただ一つだけのパイナップルがあった。
一日、二日、三日、四日、五日、十日。五人は空腹に耐えられなくなっていった。
その後どんな展開になるかは誰でも想像がつくはずです。
武田泰淳の「ひかりごけ」の世界です。

その五人が家族でも、仲のいい友達同士でも、同じ職場で働く同僚でも、同じチームで汗を流すチームメイトでも。
仮に自分がその中の一人だとしたら。

今週ある週刊誌の特集を読んだ。それは133人の死刑囚にアンケートを頼んだのだ。 
78人が回答を寄せた。自筆の絵を添えた者、米粒の様な文字の者、達筆な者、震える字、怒りを込めた字、悲しい字、達観したかに見える字。

毎日毎日死と背中合わせで生きている。
間が差した者、劣悪な環境に育った者、極道者、嫉妬に狂った者、金が欲しかった者。
病的な者、カルト信者。
様々に生きて、様々に人を殺めた。

拘置所では仏教からキリスト教等自分で選ぶ事が出来る。
陽が差し込まない三畳間と洗面トイレ一畳分の中で死ぬまで暮らす。
心の中ではきっと手を合わせているのだろう何かに向かって。

アンケートを読んでいて絞首刑とは、法に依って人を殺すとは、死刑廃止論について胸を高く鳴らしながら読んだ。


韓国の映画に“執行者”といのがある、死刑廃止が基本の韓国に於いて、この凶悪な男だけは死刑にすべしと呼ばれた男が刑の執行間際に執行者たちに向かってこういう。
“オレはもう人は殺さないが、お前たちはずっと人を殺し続けるだろう”と。

この世の中で人間程恐ろしい動物はいない。
世界中で内戦が起きている。アラブ、中東は戦火のまっ只中だ。
幼い子どもにも狙撃手は銃口を向け引き金を引く。わずかな金を手にするために。
日本はそのアラブ、中東から来る石油で成り立っている。

ある一人の死刑囚のアンケートを記す。拘置所の舎房に対する意見について。
答え“動・植物、動く物、自然が見たい”1976年伊勢崎2女子中学生殺人事件など。
1998年死刑確定)

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