愛用の眼鏡はついに出てこなかった。
今まで散々あちこちに置き忘れたのだがその度親切な方に恵まれて私の手元に戻って来た。
その日、東海道線辻堂駅のベンチに座り新聞を読みながら列車を待っていた。
やがて列車が来た。私はつい眼鏡を左サイドの椅子の上に置いてしまった。
バッグにゴソゴソ新聞やらペットボトルのお茶を入れたのだ。
乗車して再び新聞を読もうとし、あっと思った。
シマッタ!眼鏡をしまってなかった事に気づいた。
次の藤沢駅で降り、下りの列車を待って乗った。
辻堂駅のベンチに行くと眼鏡はない。
改札口に行って若い駅員さんに眼鏡は届いていませんかと聞いたが調べた結果無かった。あーあ、ついにやってしまった。
つくづく物を大切にしないズボラな自分を叱った。
“反省だけならサルでもできる”という名人のコピーが頭をよぎった。
私はサル以下なのだ。バッグの中の革のケースからリザーブの眼鏡を出した。
この眼鏡は臨時用で1800円の品。忘れた眼鏡は28,400円の品だった。
その昔、“眼鏡は顔の一部です”というこれまた名コピーの広告を思い出した。
私は顔の一部を駅のベンチに置き忘れそして失ったのだ。
黒いウェリントン型の眼鏡です。左目は乱視対応のレンズがはいっています。
届けていただければ心ばかりの御礼をいたします。
これからは物を大切にする事を誓います。
でも、駅員さんに聞くと眼鏡の届け出は少ないとの事、使い道があるからだそうです。
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