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2013年2月26日火曜日

「自分へのごほうび」




静かなプロフェッショナルたちがいる。
一人ひとり自分の仕事を丹念に長年の技で無言でこなして行く。

私が四十年近くお付き合いをいただいている会社に東洋羽毛工業株式会社さんというのがある。羽毛ふとんの製造、販売会社だ。
世の中に偽物と本物というのがあるがこの会社は全身本物の会社である。

世間になじみは無いが本物の羽毛ふとんの世界のリーダーカンパニーだ。
悪質な羽毛ふとんは粗悪な羽毛、杜撰な精毛、洗浄、縫製により安価を売り物に世に放出する。
トラブルがついて回るのはそのせいである。
眠って起きたら周りは羽毛だらけ、部屋の中は異臭が出たりする。

最高の羽毛ふとんをお届けするために東洋羽毛さんは中国や欧州から良質の原毛を輸入し、精毛、洗浄、縫製まで一貫して自社体制で作っている。
販売先は主に病院や公共機関だ。
病院に勤務する婦長さんや看護師さん、ハードな仕事をする人たちにとって眠る事は何よりの楽しみ、自分へのごほうびなのだ。だから本物の羽毛ふとんを買い求めるのだ。

半ばしゃべるのが仕事の様な私にとって、羽毛ふとんをつくる人々の世界は聖なる職場の様である。無駄口、無駄な動きは一切ない。

ちなみにこの会社に残業はない。
五時半になると全ての仕事は終わる。創業者のモットーだ。
その日の仕事はその日の内にキッチリ終える、それがプロフェッショナルなのだ。
本当ですかという者がいたので、試しにある日五時半に電話を入れると繋がらなかった。

今年で創業六十周年、赤い羽根からヒントを得て生まれた羽毛ふとん会社。
この会社には暖かい布団を生む優しい人々の魂が息づいている。
二代目社長は温厚篤実を絵に描いた様な方であった。
現三代目社長は誠実かつ仁と愛に満ちた姿勢正しい私の最も尊敬する人だ。
会社中に誠実な空気が清々と流れている。

私は三代の社長から大恩を受けている。
現在六十周年を記念する60Pのブランドカタログを作らせていただいている。
羽毛の様に心を真っ白にして。“安物買いの銭失い”という言葉がある。
巷に流れる安い羽毛布団を買ってもきっと後悔するはずだ。

時々ジャパネット高田の社長が頭の先から甲高い声を出して安い羽毛ふとんを売り込んでいる。あろう事か朝日新聞の通販広告で極安の羽毛ふとんの広告が載っている。
朝日の広告審査機能も落ちたもんだ。
で、二月末で朝日新聞はお断りする事となった。

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