「男はつらいよ」一作目 |
大好きだったNHK日曜日の「のど自慢」を二年近く見ていない。
大好きだった「なつかしのメロディ」も見ていない。
大好きだった演歌番組はずっと見ていない。
何故か見る気になれない。
少年の頃、あるヤクザ者にいわれた言葉がある。
「男は長生きと、ため息をつくんじゃない」と。
そのヤクザ者が死んだという話を聞いた。
中学時代の先輩だった。
その先輩のアパートの一室でNHKの「のど自慢」を一緒に見た日々がある。
渋谷になあ、すごい流しが居るらしいぞ、そんな話をした。
私の知っている流しは「上原げんと」の弟子であった。やはり渋谷の流しの話をした。
当時は三曲唄って100円だった。
流しの一流は400曲を覚えていなければ駄目だといっていた。
人間ジュークボックスなのだ。
お前ガキのくせしてやけに「のど自慢」とか演歌が好きだなといわれた。
そんなことはないよといった。ロックもフォークもモダンジャズも、クラシックもウェスタンも、津軽三味線も浪曲も民謡も好きであった。
小さなレコードプレイヤーにソノシートとかドーナツ盤でいろんな曲を聴いた。
渋谷で有名な流しの名は「北島三郎」だと聞いた。
目黒にあった野口進ボクシング教室(ジム)にキックボクシングの大スター沢村忠選手がいた。その沢村選手がかわいがっている歌手が抜群にうまいという話を聞いた。
真空飛び膝蹴りで無敗だった沢村選手がある夜TVスタジオ内につくったリングの上で、一人の歌手を紹介した。その名を「五木ひろし」といった。
私の仕事場の前に手焼きせんべいの「田吾作」という小さな店がある。
そこに行ったら沢村選手の色紙があった。
オヤジに何故と聞いたら時々いらっしゃるんですといった。穏やかな日々を送っているらしい。なんだかうれしかった。
大好きな歌手「ちあきなおみ」はどうしているかと時々想う。
美空ひばりと五分の勝負ができた歌手だ。
♪〜新宿二丁目裏通り・・・
もう一度ナマで聴きたいものだ。
いい歳になると過去という花びらがハラハラと降りて来る。
だからだろうか懐メロとか演歌を避けるようになったのは。
♪〜私のなみだも知らないで あの人は 何処へ何処へ行く どんなに冷たくされたって いいえ私はついて行く・・・西田佐知子の「灯りを消して」という曲だ。
思い出したくないあの日、荻窪にあったBAR「角笛」の有線放送から流れていた。
ヤバイ、すっかり長生きをし、ため息をついている。気合を入れてもう一勝負だ。
勝負はこれからだ。みんなはじめは無名だったのだ。
遂に渥美清主演の「泣いてたまるか」全20巻40話を見終わった。
最後の作品の題名は「男はつらい」脚本が若き山田洋次さんだった。
このあと「男はつらいよ」シリーズが生まれていった。
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