「五ろ引網」が地引き網を入れる。いわゆる観光網だ。
一網15万位だと聞いた。
六月七日(日)早朝に網をおろしたものをユンボでジワジワと引く、二本のロープをお客さんみんなで引く。辻堂海岸にいくつものテントが張られていた。
多くは地元の建設会社の社員家族慰労のためであった。
孫たちの野球のチームも参加していたので見に行った。
老若男女その数200人以上はいただろうか。
すでにビール、日本酒、ワイン、ウィスキー、焼酎、ジュース、コーラ、カルピスなど大騒ぎだ。漁師さんの数は六人だったと思う。天ぷらを揚げる漁師の奥さんたちが数人いた。
相模湾は魚の宝庫だったが今や魚がいない。
この日は特にいなかった。みんなでセーノ、セーノと引いた。
網を取りに海に漁師さんが入る、首まで入る。コラーしっかり引けと老漁師が怒鳴る。
みんな運動会の網引みたいに引っ張った。三十分位してやっと魚の入った網が見えて来た。ズッズ、ズーと砂浜を引きずられて膨らんだ網が現れた。
子どもたちはワァー、ワァーとよろこぶ。
漁師さんが水色のプラスチックの大きな桶を何個も用意する。
網を数人で持ちドバァーと出て来た魚は、カタクチイワシばかりであった。
シラスも少なかった。シラスはおばさんたちが釜茹でにする。
漁師さんが手際よく魚を分別する。
だが入っていたのはアジ一匹、小さなスズキ一匹、黒鯛の子が七匹だったと思う。あとトカゲを少し大きくしたようなサメの子が一匹であった。
かつてはアジ、カマス、サバ、イシモチ、キスや見たこともない珍魚がたくさん入っていた。海の上に黒いものがたくさん浮かんでいた。サーファーたちだ。
波はそれほど大きくないからじっとしている。
むかし有明海でみたムツゴロウの漁を思い出した。
ドロ海の上を細く長い板みたいなのを滑らせ、長い竿の先に付いたフックのような釣針でじっとしているムツゴロウをピッと一瞬で釣り上げる。あっとおどろくタメゴローのように、あっとおどろいたムツゴロウは時すでに遅しと釣り上げられる。
黒いサーファーたちが釣り上げられたという話は聞いたことはない。
カタクチイワシでもお頭つきの立派な魚である、みんなビニール袋や小さなバケツに入れてもらっていた。イモだかカボチャをおばさんたちが天ぷらにしていた。
先週はヨォ、カマスが4,50匹入ったんだがよ、と老漁師はいった。
私はカシャッと使い捨てカメラのシャッターを切った。
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