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2015年8月6日木曜日

「ラ・ベットラの側」




午後四時十分三十六秒、銀座二丁目20番と表示されている電信柱がある。
そこにはスタンド式の灰皿が置いてある。つまり喫煙所なのだがどうにもシマらない。

男三人、女性二人が口から、鼻から煙を出していた。
五人共に汗びっしょり、オバさんは手に買い物袋を持っていた。 
大根とネギと枝豆が入っていた。

若いOL風は左手にスマホを持ち器用に手を動かす。
突然笑い出したので隣にいた中年会社員風の男がビックリする。

ビックリした男の隣にいたのは目の前の機械屋の主人だ。
暑いなあ〜と声をかけると、晴れ晴れするほど暑いな、夏はこうでなきゃといって煙草を旨そうに喫い込み大きく煙を出した。

自転車の前カゴに黒く重そうな鞄を入れた金融関係風の若い男は電信柱に 〉の字になって寄りかかり大きくため息をついて頭を左右前後に振った。
口から出た白い煙も不規則に動いた。みんな揃ってマッタリとしグッタリしていた。

ほんの十秒の間に銀座二丁目20番地の盛夏があった。
夏の煙草はあまり旨そうじゃないなと思った。
直ぐ側にある予約の取れないイタリアンレストラン「ラ・ベットラ」に女性が四人、店の外の木の椅子に座っていた。食べる気満々の感じであった。

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