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2019年3月28日木曜日

「廊下トンビ」

春が春の仕事をしにやってきた。南から北へ桜を連れて。そして花冷えと春の嵐も連れて。午前3時43分31秒、雨戸が強風でガタガタと音を立てている。実のところ、春はあまり好きではない。なぜかといえば、お付き合いをしている会社の中に人事と言う風が吹く。好い話もあれば、辛くシンドイ話もある。えっあの人が飛んで行ったのとか、あの人が、あの人による仕掛けで、あの人の下になったとか、勇ましいこともある。あの人が、あの人にアタマに来て、アゴの骨を殴って砕いたとか(これは本当にあった話)春は廊下トンビというどの会社にもいる、会社の人事話大好きな人間が、ガセネタをアチコチに流していく。私はそんなトンビを何羽も知っている。真っ先に私に連絡してくるトンビもいる。娘や子ども、それも幼子を持つ人や、年老いた父母のいる男にとって、春を好まぬ会社員は仕事が手につかない。アノヤローブチ倒してやるとか言って、やけ酒をガンガン飲んで、カラオケ屋で大暴発する。私はそんな男たちを観察する。そこに人間性が見えるからだ。ザマーミロあの人ついに島送りだ。と言って田端義夫の「島娘」なんかを歌う。逆に「帰り船」なんかを歌って我が身を慰める男。長渕剛の「とんぼ」も歌う。東京のバカヤローとかいうフレーズに力が入る。お前どこへと聞けば北海道稚内のアザラシの缶詰工場(トドもある)行きだと、手足をバタバタさせ奇声をあげる。思わぬ大出世をした者なんかは故北原謙二のボクにはボクの夢があり、君には君の夢がある。なんて余裕を見せる。正論、苦言を発する者は、リストラ部屋に入れられ辞表を出すのを期待される。机一つ、椅子一つ、仕事なし、そんな人がズラーと閉じ込められている。妻子や家族のために男は耐えて生きる。オカアチャンはホテルでランチバイキングなんかで騒いでいる。近親憎悪の人事はやがて「八つ墓村」みたいになる。午前4時35分38秒時代は荒れている。楽しい兄弟会を過ごした後これを記した。

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