君たちは何だってそんなに徹頭徹尾、ガードを固めているんだい、いくら身を守るためといいながらやり過ぎだよ。
鮑をこの間送っていただいた。何しろ中々開かないので割れ目にドライバーを入れてトンカチでメリ込ませやっとこさパコッと口を開けた。その折り指を少し傷つけた。
その日段ボール一杯のイガ栗が届いた。有り難い心遣いに感謝だが機雷のようなトゲトゲがバリバリにバリケードをつくっていてどこから攻めていいか分からない。
しかたないからやっぱりドライバーを出して思い切り叩き続けたらいきなりパコッと空いた。突然の完全降伏に驚いた。急所をついたのだろうか分からないがその時指の先を傷つけた。
全く同じ様な形体をしている海のイガ栗みたいな雲丹を送ってもらった、こちらは生きたままで無数の針がウニョウニョと動いている。生殺しをするのは何か可哀相だが同情していては中身にありつけない。既にご飯は炊きあがり海苔の準備も出来ているのだ。
やはりドライバーで殺雲丹をした、この時プスッと指を二カ所傷つけた。
江ノ島神社にお参りした後「貝作」という昔からあるお店で栄螺を5つ買った。
家に帰り解体にかかったがこれがもう絶対に降参しない。三個は火あぶりの刑に処していた。いい香りがし、白い泡をゴボゴボ出し始めお醤油を入れると一層香ばしい。後は三つ葉をのっければお料理完了だ。刺身にしようとしている方は結局ドライバーとトンカチだ。それでも中々開かない。仕方なく家の外の道路の上で巨大トンカチを持ち出して惨殺した。あたり一面粉々であった。この時かなり深手の傷を負った。
その日胡桃を送ってもらった。これが堅固かつ断固たるものであった。
頭からといってもどこが頭か分からないのでゴロゴロさせながらバカンとトンカチで殴ったらストーンと外れて遠くに転がって行った。待ちやがれ観念しろともう一度殴ったが同じく転がった。仕方なく左手人差し指と親指で挟んでガーンとやったら思い切り人差し指を殴ってしまい痛えーと叫んだ。指は腫れ上がり爪の間に血が滲んだ。
そこにヒョコリ友人が来て胡桃はここの横をこうすればと小さなドライバーでいとも簡単にパッコリ割ってしまった。まるで脳みその形をしている胡桃の中は小さな部屋の様に分室されている。何でだかわからない。
美味に出会うには、ドライバー、トンカチ、出血の三点セットになるのだ。
最後につぼ焼きにしていた栄螺の内臓の先っぽの黒い部分がちょん切れてしまった。コレを食べなければつぼ焼きにあらずと中をほじりほじりするがすっかり奥に隠れてしまっており捕まえられない仕方なし、やむを得ずとドライバーとトンカチの出番だ。
悪戦苦闘新聞紙の上は修羅場と化し、無惨な中から黒いのが出て来た。手こずらせやがってなんては決して言わない、何しろもうくたびれちゃっていたのだ。
人間もこの物たちの様に強い意志を持ちたいものだ。
馴染みの魚屋さんに行ったらいいとも簡単にパコンパコン開けていた。勿論ドライバーもトンカチもない。八百屋さんに行ったらあっという間に栗を開けた。その早いこと、勿論出血はなし。
それにつけても我が身の意志の弱さよたった一週間の禁酒が出来ず五日目でギブアップしてしまい禁じていた分六日目の酒はすこぶる美味しくトータルで一週間分位を一晩で飲んでしまった。