奈良屋 |
いい話がとんと少ない新聞記事にも時としてしみじみするものがある。
“しみじみシジミ”の記事であった。
シジミといえばNO1は島根県の宍道湖と決まっていたのだが、今年は遂に青森県の十三湖にそのNO1の座を明け渡した。両方に行ったことがある。
宍道湖にはラフカデオハーンを題材にしたフィルムの撮影に行った。
民話の世界の湖の様に幽玄的な物静かな湖であった。
旅館でシジミのおひたし、シジミご飯、シジミの佃煮、そしてシジミの赤だし、きっとラフカデオハーン(小泉八雲)も同じメニューを食べていたのだろう。
青森の十三湖には旅の友と縄文時代の館がある三代丸山遺跡を訪ね、その足でシジミはやっぱり十三湖でしょうとなり訪ねた。湖というより海の如くであり激しく波立っていた。湖の側にはシジミの売店やらシジミ料理の店が立ち並ぶ。
友人と二人で奈良屋という老舗に行った。お目当ては勿論シジミラーメンだ。
白色薄味のラーメンだがその中に歴然とその存在をしめているシジミに敬意を表す。でかいのだ。
東京なら少し小降りの浅利位の大きさである。旨い。
しばらくは東京へ送ってもらっていた。
奈良屋のシジミラーメン五パック入りをある友人は呑兵衛なので月に4㎏を送ってもらい毎朝シジミ汁を飲んでいる。
宍道湖のシジミはシジミの定番サイズである黒く小さくだ。八丁味噌などで赤出汁を作ると涙がポツンと落ち、お椀の中の赤出汁に波紋が起きる。
十三湖のシジミはフライパンにバターをひき袋ごとドバー、ガタゴロンゴロンと入れ刻み葱と刻みニンニクと共に炒めて貰う(自分ではやらないけど)縄文人も毎日食べて、食べて、食べまくっていたのだろう。
貝塚は山の様になっていた筈だ。ある飲料会社にお酒好きの人たちに「しみじみシジミ」というネーミングの提案をした事がある。今やシジミオルニチンはブームとなっている。
但しいかなるシジミを持ってしても飲み過ぎ人間にはその効果は多大ではない。
大酒のみで週に4㎏を食べ続けた男がいたが、今生きているかそうでないかは不明である。