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2012年5月14日月曜日

「侠客」




もうどうにもこうにもやってられネェよ、何しろ俺たち渡世人(ヤクザ者とも云う)の仕事というか生きている証しといえば喧嘩と博打だからな。
キリストじゃあるまいし、右の頬を殴られたら左の頬を出せなんて訳にはいかない。

一度でも下手を打ったら(男を下げたら)渡世人として生きてはいけネェからな。
この頃じゃ半グレの方が俺たちよりハネてる(儲けている)し暴対法にも引っかからネエからやりたい放題だ。

と、電話の向こうで話をするのは男を売り物にしていた高校の頃よく遊んだ先輩だ。
近々稼業を辞めるという。まあ歳も歳だしその方がいいんじゃないのかなといった。
暴対法がじわじわ効いてきている。
男と男の勝負に命をかける男が居なくなるのは淋しいものだ。

中学を卒業する時に将来は何になりたいかというのを書かされた(生活指導の先生に)私は三州吉良の侠客、吉良常の様になる、と書いたらなんだ「吉良常」とは、といわれた。
先生尾崎士郎の「人生劇場」読んでないの?そこに出て来る吉良仁吉の流れを組む侠客だよといった。

何を考えてんだ君はといわれた。
話が通じそうもないので知らなきゃいいですよといってやった。
この生活指導に一度思い切り殴られた事があった。その積年の恨みを卒業間近の時に晴らした。理科の実験室の裏で生活指導はゴメン許せなどといって謝ったが時すでに遅しであった。母親が学校に呼び出されたのはその数日後だった。

やられたらやり返す。これは我々人間に与えられた等しき権利だ。
電話の向こうの先輩は奥さんの田舎に帰って果物とか野菜を作るらしい。
きっとウメエの作って送るからヨオといって電話を切った。
夏になったら一度いってみようと思う。とんでもない位喧嘩に強く、女性にモテた。
この人に男とはを教えてもらった。決して道を外さない筋を通す人だったがんばれ侠客。

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