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2020年3月18日水曜日

第39話「私は苦笑」

私は「苦笑」である。ボーと海を見ていて。ふと考えた。長い間大声で笑っていないと。中声でも小声でも笑っていないなと。これは私苦笑だけが思っているだけでは、ないはずだ。世の中が笑ってる場合じゃないことだらけで、人が笑わなくなった。お笑い芸人の人たちが、ひととき笑わせてくれるが、その笑いは腹の底からのものではなく、芸人さんの芸で笑わしてもらっただけなのだ。ボーと海を見た日曜日の夜、何か笑わせてもらいたいなと思い、ネットフリックスで、大好きな芸人さんのシリーズを見ていた。中川家の漫才である。兄弟のコンビで兄は小さく、弟は大きい。お笑い界の大賞を得ている人気コンビだ。弟は鉄道ファンで有名である。何しろ人間に対する観察が驚異的で、私苦笑は中川家を師匠と思っている。四日間完全禁酒をしたあとの日曜日、大好きなサンマの開き(干物)たら子を焼いたもの、松前漬け(数の子がサイコー)鯛のアラのすまし汁、ホタルイカ。ネギとカラシたっぷりの納豆を食した。五日ぶりの日本酒を二合飲んだ。街にはすっかり定食屋さんがなくなり、いわゆる家庭料理が食せない。私苦笑は、ムギトロ&メザシとか、イワシのショーガ煮&肉ジャガとか、アジの開き&ウインナー炊めなどがウレシイ。愚妻は私苦笑が何を欲しているかは、ほぼ分かる。白米は一日茶わん一杯半位しか食べない。NHKの大河ドラマを見て、一人ブツブツ注文をつける。酒が回ってなんだか気持ちいい。口の中に数の子の粒々がいくつかあるのを、大切に味わう。その後ウー、ウー、とうなされた。紙に自分の名前を書くが、いくら書いてもちゃんと書けない。変な奴が早く書けと現われる。ほんの三十分ほど眠っている間に、嫌な夢を見たのだ。忘れない内にその夢をサインペンで新聞紙の上に書きなぐった。あ~気分悪いと思い、中川家で笑いたいと思った。それにしても笑ってねえな、この頃と思った。地球上の動物の中で、夢を見るのと、大声で笑えるのは人間だけのはずだ。その人間から笑顔が消えて久しい。中川家の芸は芸人たちも、腹をかかえて笑う程すばらしい。悪夢がまだ脳内に残っているが、大阪の通天閣近所でロケをしているのをジャマする。酔っ払いのオジサンに笑った。だが私苦笑は実のところ笑っている場合じゃない。小一時間中川家を見たあと、現実に呼び戻された。久々の酒はすでに覚めていた。私苦笑は新型コロナウイルスをかかえて、一つの仕事を成し遂げねばならない。スタッフやキャストの人に、感染させてはならない。私苦笑に決断を要するものは何か。昨夜(十一時五十分頃)IOCがオリンピックを予定通り開催すると決めたというニュースを見た。フェイクニュースではと耳を疑った。アテネの聖火リレーの大事な引きつぎの儀式に、日本の委員会のボスとその次が行かないことに決めたという。金メダルスト二人も。完全な形での開催が、すでに不完全なのに、完全な形でという。共同通信と時事通信は、日本のニュースの発信源だが、内閣の支持率が、8%近くも違う。片や49%、片や41%。ある新聞では36%であった。私苦笑は首をかしげる。で、今をときめく講談師、神田伯山の悪事の馴れ初めを見る(全8話)。100年に一人の天才といわれている。私苦笑はその才能の凄さに、身を正した。チケットは全く手に入らない。若い才能がいろんな分野で花を咲かせてほしいと、思いながら魅入った。神田松之丞改め神田伯山は、過日真打ちに昇進したばかりだ。一話一時間位ある話を、百話近くマスターしているという。ダダン、ジャンジャン、ババン。名調子をナマで見聞きしたい。チケットを手に入れて、私苦笑はうれし笑いをしたい。外が明るくなった頃、敬愛するフリーのライターさんから借りた、パリ、テキサスのサウンドトラック版のCDを聞いた。メザシとライ・クーダーは絶妙であった。
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