風流な人とは実は天邪鬼であったのだろう。
花見と言えばみんな上を見てウァーキレイ、ウワァーサクラダなんて至極単純に喜ぶ。
風流人といえば、散る桜の方が好きだから下を向いて花見をするなあんて言うのだ。
桜満開の季節は大嫌いだというのは、大きな会社の人事部長や人事課長たちだろう。
花に嵐にたとえもあるさ、さよならだけが人生だなんて、人事で冷や飯を食わされ遠くへ飛ばされた人たちが、桜を見ながら「恨み酒」を飲む。
あの人事課長めオレの事色々告げ口しやがってオボエテヤガレとか、アノ人事部長め盆暮色々贈ってたのにオレの事ヒデエー査定しやがってオボエテヤガレとか、大声で叫んではウルトラ悪酔いをする。
こういう人たちは風流な人とは程遠い人たちで、桜の花などを見ずしてひたすら絡み続けて遂には警察に保護されたりする。
留置場に泊められても悪態を晒し、何がさよならだけが人生だ、フザケンなと暴れた後一気に眠りに入り猛烈なイビキをかき、他の留置人たちから質の悪いサラリーマン野郎だ静かにしろなんて叱られるのだが、本人は朝までゴーゴーと眠る。
朝、看守から起床の掛け声を浴びせられてここはどこですか、私はどうしたんですか、なんでここにいるんですかと泣き声になる。
桜の木を何本も折りやがって、会社クビになるぞクビに、と脅されて塩を掛けられたナメクジみたいに縮こまってしまうのだ。
上野や千鳥ヶ淵、青山墓地や新宿御苑などの桜の名所付近の警察のトラ箱は満杯状態となるのだ。
私は夜桜の花見が大の苦手だ。
何度かやったことがあるが風流な思い出や、いい思い出はなかった。
ブラブラ歩きながら、オッこんなところに桜の木があったのか、オッこんなところに小さな桜の木だけどいい感じだな〜、オッあんなところにキレイな花筏が流れているではないか。そんな発見をするのがこの季節の楽しみだ。
花見はキョロキョロするものと思っている。
私の知っているある風流人は(?)花見を一度だけするらしい。
桜前線の最終章、東京から北海道の果て稚内に行き、これより先に桜を見る場所はなしという所にポツネンと咲く一本の桜を見てワンカップ大関をグイと呑む。
つまみは名物トドの缶詰で、これぞトドの詰まりだとか、トドメの桜だなどといって悦に入るのだという。ウソかマコトか見た事は一度もない。
一緒に行ったという人もいない。だが本当だとすると風流の極みではないだろうか。
稚内→ワッカナイ→ワカンナイ…。
0 件のコメント:
コメントを投稿