闇の世界の情報を集めそれを自在に操り、国家権力から巨大企業、大マスコミがこの一人の男を頼りにした。
銀座のクラブに巨費を落とし、日々生々しい情報を得ていたという。
「裏社会の案内人」ともいわれた。男の名は「石原俊介」という。
表では雑誌の発行人が本業だ。リクルート事件、イトマン事件、東京佐川急便事件、金丸脱税事件、ゼネコン疑獄、損失補填事件、ブルネイ王室AV女優接待、2信組事件、総会屋利益供与事件、大蔵・日銀接待汚職事件、芸能界脱税事件、武富士事件、日本振興事件などなどおよそ事件と名のつくものの情報を正確に持っていた。
ヤクザ社会や芸能界、警察、検察機関もその男の情報に頼った。
政治家の愛人問題のスキャンダルを最小限度に押さえた。
情報フィクサー石原俊介を知らない者は闇の銀座ではモグリであった。
また「兜町の石原」ともいわれた。東京電力の顧問でもあり、さまざまな場面を仕切っていた。小沢一郎の事件では最後まで小沢の味方で無罪とした。
腕と度胸で成り上がった男の封印されていた半生に迫る傑作のノンフィクションが出た。裏の事に興味がある人にぜひオススメした。
本の題名は「黒幕」著書は伊藤博敏、小学館より出版。本体1,800円+税。
石原俊介はついこの間この世を去った。未だ黒幕の体温が銀座の夜に深々と残っている。
また闇社会の守護神といわれた元特捜検事、元弁護士、元懲役囚、田中森一が死んだ。
闇社会の主人公が次々と消えていくのも時の流れだ。
ほっとしている者、支えを失ってガックリしている者、様々な情報を持って骨と灰になった。闇社会には次の情報フィクサーが生まれるのだろう。
日々、夜と朝の間には映画や劇画よりもすさまじい情報合戦があり、おぞましい男と女、男と男、女と女の魔界がある。知りたくもない事を知りたい人は読んでみるといい。
見えなかった景色が見えてくる。(文中敬称略)
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