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2015年1月27日火曜日

「品川巻」


枯木に一羽、名も知らぬスズメを大きくしたような鳥が止まっている。
ただの枯木がこの一羽のおかげでちょっとした山水画のようになる。

仏前に備えてあったリンゴを新しいリンゴにかえた時、これを小さく切って小さな庭にまいてやったらきっと鳥たちは喜ぶだろうと思った。
包丁でカタコト切っていると、愚妻がリンゴをまくとカラスが集まるからやめてよといった。カラスだって鳥じゃないか、来たきゃ来ればいいんだよといってリンゴを細かく切った。左手の親指も切ってしまった。

眠る前に両手にいっぱいとなったリンゴを花さかじいさんの様にまいてみた。
朝起きて見るとリンゴはすべてなくなっていた。
次の日の朝も、その次の日の朝も、三つあったリンゴを三日かけてまいた。

昨日はリンゴをまかなかった、枯木に二羽、同じ鳥が止まってキョロキョロしていた。
鳥の嗅覚はどれほどなのだろう。リンゴをまくとすぐに飛んで来る。

鳥の名を調べようと鳥類図鑑を広げた。椋鳥(ムクドリ)のようだった。
英語名/ Starling・スターリングとはいい名ではないか。
リンゴは長持ちする果実だから今度まいてやれるのは2週間後位だ。

何故椋鳥がと思った、そうかお隣は大きな家で庭も広く太い木が何本もある、そこに集まって来るのだろう。駅から降りて来るとスーパーの出店があり、リンゴを売っていた。
一袋五個四百五十円也、両手にカバンと袋を持っていたので買わずに帰った。

一月二十三日午後十二時〜午後一時三十分、NHK Eテレ「日本人は何をめざしてきたのか」。「石牟田道子」さんが四十年かけて書き上げた「苦界浄土」を取り上げていた。
近代とは何か、最後に石牟田道子さんはいった。
都会の大地はビル群の下で息もできずにいる。
林立するビルはまるで墓場の卒塔婆のようだ。鳥たちはビルに止まることはできない。
行き場を失った鳥たちが人間への仕返しをする日が来るかもしれない。
ヒッチコックの名作「鳥」のように。
石牟田道子さんは次の世紀は大地に息をさせてあげたいといっていた。


「天に星、地に花、人に愛」武者小路実篤の言葉を3.11を風化させない、二度とあのような地獄絵にならないことを祈る塔のコンセプトにした。

一月二十六日、NHK NEWSWEBのつぶやきビックデータ今日注目の言葉の中に、イスラム国の「イ」の字もなかった。
日本人のいちばんの特長は、何か一つワァーと大騒ぎしてすぐに風化させることだ。

列車の中で缶ビールを飲みながらせんべいをずーっとバリボリバリボリ食べる奴が私の後ろにいた。列車は大船駅を出た。我慢できず振り返ってウルセイ、クセイ、静かに食えといったら、品川巻きの海苔の部分をかじっている途中でキョトンとしていた。
四十前後の男だった。

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