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2010年7月1日木曜日

人間市場 淵野辺市


W杯熱狂冷めやらぬ中、私が最も大切なお付き合いをさせて頂いている会社の社長さんに、いま企画している展覧会へのご協力をお願いに行った。

私が一人で会社を起こして初めて仕事を頂いた羽毛布団の製造販売会社である。その名を東洋羽毛工業という。現在の社長は三代目である、世襲ではない。

この会社の特長は販売先がほとんど医療関係、看護師さん相手である事だ。
唯一、日本看護協会の指定を受けている。日夜過重労働をしている婦長さん以下ナースステーションの人々にとって寝る事は何よりの贅沢。自らへのご褒美である、それ故最高級の羽毛布団を購入する。北は北海道から南は九州、沖縄まで広い販売網を持っている。現在の社長さんとは四十年近いお付き合いである。

人間にいい人という概念がある。それは誠実、真面目、責任感、純粋、奉仕、包容、愛情、温和などがあるがその全てを持って余りある人はいない唯一無二と言っていい位の人格者である。

本社は神奈川県の淵野辺にある。この地はかつて旗本領で烏山藩とも云った。
養蚕が盛んで桑畑が広大に広がっていたと云う。戦時下は日本陸軍の兵器学校があった。

今は若者の街に変わってきた。麻布大学、青山学院大学、桜美林大学等が次々と設立され駅前近辺は学生用のアパートやマンションが建ち並び住宅も建ち始めている。

午後四時に訪ねW杯の話題で盛り上がり、睡眠不足である私は出して頂いたコーヒーで目が覚めた。お願い事をした後、社長が食事を予約してあるからと五時二十分迎えの車に乗った。この会社は残業ゼロである。朝八時半から午後五時半でピタッと終了する。電話も繋がらない。創業者からの経営方針である。

連れて行って頂いた処が素晴らしかった。社長は淵野辺にもこんな処があるんですよと言った。「さ蔵」という。オーナーが石材商を営んでいるとか、まるで平城の様である。門構えは巨大な城壁の様である。花崗岩か安山岩、閃緑岩かと思われる石が迎え入れてくる。料亭の中は広い回廊造りで長い直線は見事な一枚板で演出されている。中庭は広く緑の庭園である。煙草を一服楽しめる様配慮されている。



個室に案内される。掘りごたつ式で足が下ろせる。
社長と私と社長の右腕で凄腕の美人部長(お酒が強い)と話題は尽きず楽しいひとときである。次々と料理の出る事盛り沢山。杯でチビチビ飲みながらチビチビとチーズやクラッカーを食べていたのでお腹が余り空いていない。



外はまだ明るい。いらっしゃいませと入って来たのが何とも小さく可愛い品田楓さん18歳(胸に名札が付いている)本当に小さな卵顔おでこに黒いホクロ。
インドの女性がつけるビンディの様、インドでは結婚している証しとして付ける。楓ちゃんは未だこれから、とても見事なビンディだからきっといい男性と出会えて幸福になるよと言った。ピンクのシャツにジーンズ、ピンストライプの黒のジャケットのあまり変なお客さんに楓ちゃんはいつもと勝手が違うみたいであった。

独身の男の人はぜひ淵野辺の「さ蔵」へ、但し安月給では行けない、店の名は桜の木と店内にある蔵造りの場所にかけてつけたという。
折角のお料理を半分以上残してしまい、天ぷらやらローストビーフはパックにしてもらって夜食のつまみにさせて頂いた。


社長さんは現在七十歳。奥様とは中学一年生の時からの純愛である。私は奥様の大ファン、最高に話が面白く独特の表現力を持っている。趣味は刺し子とか。刺し子をしていれば飽きる事なしという。

昔話やこれからの日本、これからの経営等話は花火の様にパチパチと飛び火して盛り上がった。楓ちゃんが美味しそうな釜飯を持って来てくれたが残念ながらお腹に入らなかった。素晴らしい人格の社長、仕事が出来る美人部長、かわゆい楓ちゃん、笑い声の絶えない三時間であった。誠にありがとうございます、ご馳走様でした。

淵野辺に行ったらぜひ「さ蔵」へ、本物の羽毛布団は東洋羽毛さん(和田アキ子を起用して十年間CMを提供していた)。
いい睡眠は一番の健康法です。

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