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2010年7月9日金曜日

人間市場 田植え市


男に色気が無くなってきたなと感じる。遊ばないからだと思う。
遊びに投資する余裕もないサラリーマンの平均小遣い六万円位、昼食代五百円、飲み代月平均31回の飲み代平均四千九百円、これでは何も出来ない。

新橋の機関車広場でインタビューされると、カアチャーンお小遣い上げて下さーい。なんて酔っ払っている。

遊び人(ヤクザではない)は、夜の粋、朝のしらふといい、昨夜した事は全て男の粋だから忘れてくれろ、朝は何事もなかった仲で別れよう。
こんな事が出来なくなった。夜は○×さんツケ溜まってんのよ、朝は全く始発まで寝かせろなんて最低ネとなったりしている。交際費はカット、タクシー代は一切出ないからだ。
朝マックとかネットカフェで仮眠している姿が切なくも悲しい。青山とかコナカとかAOKIのスーツが汗にまみれている。
家に帰ると、あなた臭いとか娘にはお父さんダサイなんて言われる。ふざけんな、俺はヘトヘトになりながらバカだアホだと言われながら働いてんだバカヤローと、決して口には出さない、出したらとんでもない反撃があるからだ。

京都の祇園に伝説の遊び人がいる。
深夜になると化粧を落としたお姉さんや舞妓はんたちがスナックに集まって来る。
そこでおと〜はんは人気者である。祇園で知らない人はいない、土地の親分も一目置く。祇園の事はこの人に頼むと全て可能となる。

何しろ一代で何代も続いた大店を祇園の遊びで潰してしまったのだから。その人と話をした時、何が一番楽しかったですかと聞くと「そうでんな、やはり田植え遊びやろかな」と言った。田植え遊びとは広い部屋に京豆腐をびっしりと置き、そこに一万円札を稲の様にこよりにし、お姉さんたちの着物をはしょらせお尻を丸出しにし、自分も一緒に田植え歌を唄いながら一本、二本と一万円の稲を植え込むのだという。

綺麗でっせ、お豆腐の白い色とお姉さんのお尻。
一万円がずらっと並んだ風景、それを見ながら一杯や、どうやったらいっとうお金を使い切れるか考えたアイデアでんな。商売が嫌で嫌で仕方なしやったんです。おと〜ちゃんこっち来て一緒に飲みよし、今晩うちとこ寝ていってよろしよ、ほなそうさせてもらうわ。なんて会話が自然に交わされている。歳は言わないが七十代であろうと思う。
少し男っぽい歌舞伎役者の佇まいであった。

田植えでは一晩に一千万、二千万を平気で使ったという無敵の遊び人であった。
祇園では芸能人は余り人気がない、ケチであり自分のお金で遊ばない。人の金で遊ぶ男は必ずモテない。

逆にモテるのは一文無しでヒモの様な男、この人は私がいないと生きていけないそんな母性本能をくすぐる男、売れない役者、売れない物書き、売れない絵描き、足を洗えないヤクザそんな男にはとことん尽くすのだ。売れっ娘は売れない男好きという事だ。
後を通っただけ、前に立っただけで体の芯にゾクッとする色気を感じる、そう言わせる為には夜の学校で月謝を払って男を磨かないとならない。飲み代を現金で払ったり、領収書下さいなんて言ってては遊び人にになれない。それじゃ帰り後はよろしくで終わりが正しいのだが。

隣の席で飲んでいる男が今日さぁー電車に乗っていたら前の席に座っている女の子の胸の谷間オッパイバレーていう奴、凄くいいのずっと見とれていたら駅を二つ乗り過ごしてしまいましたよ、なんて一生懸命場を作っている。五人連れの中で一番若い男だ。銀座の高い店に連れて来てもらってすっかりハイになっている。

銀座の女の子は今や獲物を追う獣の様になっている。
目はギラギラと輝き携帯を打ち続ける。祇園とは違う、はんなり感しんなり感が銀座にはなく遊び慣れた私は獲物を待っている処には近づかない。ただしかし若い男たちがどんどんつまんなくなっているのが心配だ。持ち金があれば豆腐にお札をたっぷり植えてこれ持ってけなんて言ってやりたいのだが。
凶作、不作である。

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