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2010年7月7日水曜日

人間市場 土下座市

東京の近くのある県に一人の男がいる。
この男の財力の前に政界、財界、芸能界、映画界、ヤクザ界、相場屋界、相撲界、落語界、歌舞伎界、およそ○○界、××界、△△界と名の付く世界の人間が跪き土下座し泣き崩れ、若いアイドルを貢ぎ物に差し出し金を借りる。座長公演などをやるとチケットを売らねばならない。大変な負担が座長にのしかかる。文字通り体を張らねばならない。

選挙資金、会社の不祥事のもみ消し金、買収金、悪い女に食いつかれた財界人の手切れ金、芸能界は見栄と虚飾の世界、お金は幾らあっても足りない。自分の芸の不足は体で補うしかない。

博打で大負けした者、相場で負けた者、若い衆のケツまくり内乱を治めなければならない親分、幹部。映画作りで大穴をあけてニッチモサッチモ行かなくなった男。毎日門前市を成すが如く金を借りに現れるその人間達を土下座させ見下ろす。その快感は見てくれの悪い小太りの小男にとって何事にも代え難き快感である。

私の長い友人がいる。画家である。その友人の娘がある大きな劇団に入った。
政治家とつながりが強い事で有名な劇団である。娘さんは待望の劇団員になれた、すこぶる美人で可愛い娘さんである。

ある日座長の男に一緒に付いて来る様にと言われお供をした。都内のホテル、大きなスイートルームである。そこに小男は現れた。座長はいきなり土下座し、お申し込みの件何卒、何卒と頭を床に擦り付けた。娘は何事かと思った。普段は鬼より恐い人だし、又心より尊敬もしていた。劇団員数百人を率いる人である。

何やら泣きわめき続けているではないか。十九歳の娘も勝手が分からずつい一緒に土下座していた。お〜君はいいんだよ君は、手をあげなさいと抱き上げられた。
小男の腕が娘の胸に当たった。気持ち悪いと思った。やがて二人は隣の部屋に行った。娘は椅子に座らされていた。座長が来て僕は先に行くから君は少し残って先生のお話の相手をする様にと言われた。

えっ、私嫌です一緒に帰りますと言った。小男がいいじゃないかルームサービスで美味しいワインと美味しい物を食べようと言った。いいです嫌ですと言った。バチン、座長は娘の頬を叩いた。特別気の強い娘は受話器に手を付けた。後から又叩かれた。
嫌です、何ですか気持ち悪いといって大暴れした。その後どうなったか、小太り小男は警察に訴えられた。座長は元大臣にとりなしを頼んだ。

当然娘さんは劇団を辞めた。
その父親は私の処にこの話を持って来た。娘はすっかり人間不信となり落ち込んでしまった。許せない、警察に訴えたがとんでもない大物とかで腰が引けて何も出来ない。一部のマスコミが騒いだが一気に押さえ込まれてしまった。娘の友達の話だと何人も被害に遭っている、でも大きな役をもらうためだから仕方ないと割り切っている娘が多いという。

どうしたらいいだろうかと言っても私は必殺仕掛人じゃないしなと言った。
石が浮かんで木の葉が沈むだな。テレビに横綱白鵬はじめ関取ずらり。武蔵川理事長以下理事ずらり、そして最敬礼のお辞儀、誠にすみませんでした。

その頭を下げている中にあの小太り小男に土下座して金を借り続けている者を知っている。何が国技だと思いながら私の親友の娘さんの忌まわしい過去を思い出した。

博打と女は一度はまったら余程の強い意志がないと抜けられない。
私は見事に抜けた。鉄の意志で。酒だけは止める気がない。心はかさねても体はかさねない、特定以外は。汚い生き方はしたくない。決して屈しない。人生は意志との戦いだ。


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