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2011年11月16日水曜日

「真っ赤な嘘」




お葬式メシじゃないんだから何も手を合わせる事はないと思う。
武士社会の名残か食事の前にいちいち手を合わせ、いただきますをする人がいる。
楽しい食事が辛気臭くなってしまう。


その夜ホテルで原稿書きをしていて腹が減った。
よし、今夜は吉野家だと決定し入った。深夜一時十五分、派手なつくりの若い娘さんが入ってきた。カールされているのは二重つけまつ毛だ。すいません、牛丼の並盛りとお新香とお味噌汁をお願いしますと注文をした。

体中から一仕事終えた疲労感が漂っている。両腕をついてメールを見ている。そこへ注文の品が出る。
静かに手を合わせ黒い箸を両手に渡しもう一度顔の前に持って行き声は出さずに「イタダキマス」。

食べ終えた私が立ち上がり勘定しながらそんなに拝んでばかりいたら牛丼が「マズク」なっちゃうよ、働いた後はガツガツ食べた方が「ウマイ」よといったらコクンと頷いてペロッと舌を出した。
その舌は紅生姜で真っ赤であった。

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