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2015年6月19日金曜日

「藤井保さんと新良太さん、そして…」


藤井保氏「ぐんげんどう・経(たて)」より
新良太氏、井上嗣也氏の写真集より





天才的な作曲家がいる。
天才的な作詞家がいる。
天才的な編曲家がいる。
天才的な歌手が唄う。
だがヒット曲というのはここ数年アニメの主題歌位しかない。
才能がある人は音楽界にあふれるほどいるのに何故だろうか。

天才的な画家がいる、だが売れない。
天才的な陶芸家、天才的な彫刻家、天才的な書家。
だがみんな売れない。

銀座には数多くの画廊があり、個展やグループ展が催されているが、残念ながらこの一年一度も身震いするような作品に出会うことはない。

十数年前通称「通天」といわれる人の大作を見た衝撃はない(この時は心臓がバクバクした)。時間があると画廊を回るのだが、そこには工夫がなくいつも入りにくい。
どこかまったりとしている。いつか見たような、どこかで見たような作品ばかりが天才的(?)に描かれていたり作られている。
「性」がないからだろうか、「狂」がないからだろうか、「死」がないからだろうか。

先日二冊の写真集が送られて来た。
一冊は藤井保さんという広告写真の巨匠の作品である。
葛西薫さんとのコンビで数々の広告賞やデザイン賞を受けて有名だ。

ご自身の故郷島根の民話とか伝承の世界を独特の階調ある写真で語り継ぐ。
藤井保さんと北海道出身の葛西薫さんは階調が合うのではと思った。
作品で表現される色温や色感は生まれ育った地のものだからだ。
二人の作品にスカッ晴れの空はなく、真っ白い雲はなく、緑の大地はない。
だがいかなる絵画より心の深くに迫り来る。
クリエイティブディレクションは佐藤卓氏、デザインは林里佳子氏。
 素晴らしい写真集であった。

題は「ぐんげんどう・経(たて)」平凡社刊、本体5,000円である。
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の世界を感じたい人にぜひおすすめしたい。
松葉大吉著の自分史も読める。

もう一冊には言葉を失った。
新良太氏の写真をグラフィックデザインの巨匠井上嗣也氏がアートディレクション&デザインをしている、と来れば常識はない。
月という存在がグラフィカルにデザイン化されている。
北海道で撮ったという太陽は原爆化されている。
未だかつて見たことのない写真集である。
哲学的であり、観念的であり、無邪気な遊戯でもある。
大判の写真集は売るためのものでなく、見てもらいたい人だけの限定であった。

藤井保さん、新良太さんの作品はきっと大きな評価を得ると確信する。
本当の天才は実にひっそりとしていることを改めて知った。
残念ながら絵画ではそんな人を味わっていない。
但し今私の手元には一人の天才的画家の絵がある。
友人からその発表を託されている。

六月十六日ある画廊のオーナーと打合せをした。
来年の三月に世に出すことを確認した。すでにイメージの中でセレクションをはじめた。話題を呼ぶであろうと思う。画廊の世界観とはまるで違う、スポーツマンのようにステキなオーナーも興奮(?)していた。ご期待されたし。

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