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2010年8月24日火曜日

湘南の嵐便り 「あこぎ」


あの野郎は本当に「あこぎ」な奴だ、殺されたっていい位だ。
あの家のあの人も酷い「あこぎ」な人よ、高利で金を貸して取り立て、恐い人を使って厳しいって話よ。

この「あこぎ」の語源を講談で知った。



三重県津市に阿漕浦(あこぎうら)というのがある。
そこにある悲話が伝えられている。悲話ゆかりの寺、上宮寺(通称あこぎ寺)。
主人公は、貧しい漁師「阿漕の平治」。伊勢神宮の神饌を調達する神聖な海のための禁漁区に平治は禁を犯して毎夜密漁を重ねてしまう。
そして捕まり簀巻きにされ海に放り込まれ死罪となった。そこから図々しく貪欲な様を「あこぎ」というようになったという。世阿弥の作にもなっている。

ところが平治は私利私欲の為ではなく、病の床に伏す母に精を付けさせたいと密漁を重ねたのだ。死してなお母を思い続ける平治の涙の後日談もある。
地元では平治は孝行息子の代名詞となって今も語り継がれている。

昨今老母達が息子達に放っぽらかしにされたり、粉々に砕かれたり、どこへ行ったから判らなくされている。消えた老母の年金だけで暮らしている息子もいた。
まるで社会全体が「あこぎ」な姥捨山と化している。

若い頃の苦労は買ってでもしろといわれた。
それはやがて親孝行をするための苦労なのだと思う。
つくづく「あこぎ」な出来事にため息が出る。

老人を大切にしよう。そうしないときっと化けて出てくるよ。

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