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2013年11月15日金曜日

「校庭10周だ」




2000メートルを超えるメキシコの高地で生活する民。
移動手段は二本の足しかない。

この地に「ララムリ」というほぼ自給自足の民がいる。
彼等は一日中走る、走る、ひたすら走るのだ。メキシコはかつてスペイン軍によって襲われ支配された。

戦いを嫌った「ララムリ」は逃げて、逃げて、走って、走って高地に安住するようになった。彼等の現金収入はヤギを育てて売る事と、100キロのマラソンに出て6位までに入賞するしかない。断崖絶壁を登り下る。急な坂を転げ落ちる様にひたすら走る。
タイヤのゴムで作った素足同然のサンダルで。

平地を走る速さはオリンピック選手のタイムと同じ位だ。
6位に入れば家族一年分の食料代となる。
一人の伝説のランナーは今年も1位を目指していたのだが彼はその会場までの70キロを歩き、そして走ってきた。その疲れがすでに若くない超人の足を痛めていた。

ランニング写真専門のカメラマンはスタートして直ぐに、そのあまりの速さと凄さについて行けない。レポーターとして来た元K-1チャンピオンの魔娑斗はアスリートであり足自慢だったがやはりスタートして直ぐについて行けなかった。

33歳の伝説のランナーは足の痛みに耐えながらも最後まで走り抜いた。
男として、父として、夫としてのプライドだ。
優勝者のタイムは8時間余、伝説のランナーは10時間余だった。
「ララムリ」は間違いなく世界一走る民だ。

そのルーツは「ララヒッパリ」という足による球技からだ。
松の木をナタで丸く切ったソフトボール大の固い球を、10歳から15歳位の子が、まるまる一晩中素足同然の足先で蹴り上げながら走る。
サッカーの原型かと思ったらそうではない。

丸い玉は彼等が信仰する太陽なのだ、太陽を転がし動かす事によって太陽の永遠の輝きを願うのだ。トウモロコシの豊穣を願って。
ヤワな都会人は固い球に足先が触れただけで悲鳴をあげるだろう。女性たちは赤、青、緑、黄、橙、色鮮やかなスカートを持って集まって来る。勝者にスカートを賭けるのだ。

漆黒の闇の中「ララヒッパリ」のスタートだ。
オールナイト競技なのだ。松明の灯りを持った大人が伴走し、少年たちをファイト、ファイトと応援する。球は崖から転がり落ちたり、イレギュラーな運動をしまくる。
真っ直ぐには行かない。少年たちの足と指は痛むが敗けてなるかとひたすら固い球を蹴り走る。トウモロコシよ沢山なってくれと思いながら。

「ララムリ」の民は急勾配の岩の中に住んでいる。
主食はトウモロコシで作ったナンみたいなものと大きな豆だけ、一日二食だ。
固い球を蹴りながら連帯感を深めて行くのだという。
夜が明け敗けた少年たちは悔し涙をため次にはきっと勝つ事を誓う。

「ララムリ」の民は明るい、仲が良い、人と人が励まし合う。
物質文明にどっぷりとつかった私は強烈な蹴りを入れられた(明け方にドキュメンタリー番組を見た)神も仏も信じない私に、太陽は信じなさいと命じられた。
地球上をたった一つの太陽が守ってくれているのだから。

北京の子どもたちが描く空には真っ赤な太陽は無いという。
福島の子どもたちは青い海を描かないという。

小泉純一郎元総理がこれは俺の感性だと脱原発を声高に叫び出した。
日本はヤバイというのだ。1112日記者クラブには350人近い記者が集まった。
この国は間違いなく、全てにヤバイ方向に向かって、走って、走って、走り進んでいる。
「ララムリ」と違うのは、皆利権に向かっているという事だ。

日本列島を空から見てみると分かる。この国は世界一の山林の国なのだ。
いつの日か中国からの大気汚染や原発の放射能から逃れる国民が山に向かい走りに走るだろう。地上では無実の民が、お前はスパイだろうと疑いを持たれ、それから逃げまくっているだろう。

自分さえ良ければいいんだという自己主義と、権力の暴走に対する無関心がいちばんヤバイ!と思う。コラッ「ララムリ」は凄いが「オラムリ」だと。
そんなことを言う奴は罰として校庭を10周走って来い。

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