ページ

2017年1月31日火曜日

「ニューヨーク•タイムズに声援を」


ボブディランは、友よ答えは風の中に舞っていると唄ったが、世界は一人の大統領のツイッターの指の先で困っている。マイッテル、で、憎んでいる。つまり病んでいる。
うんざり度300%位のツイッターを乱打するトランプ野郎をなんとかしろと、きっとメキシコのマフィアや、アルカイダや、中国マフィアや、イスラム国の危ない連中が何かやらかすのではと、世界中がひっそりと期待している。
それにしてもアメリカの大統領の存在がこれほどまでに絶大とはと思う。
ニューヨーク•タイムズがその巨大な権力に徹底的に戦いを挑んでいる。
ジャーナリズムは決然と生きているのに救われる。
アメリカは四権国家であった。司法、行政、立法、それと報道の権利だ。
通信簿でずっと長い間、英語が「1」だったのでニューヨーク•タイムズが読めないのが残念だ。今は遠くよりフレー、フレー、がんばれと声援を送るしかない。
今日はやけに気分が時化ているのでここまでとする。


夜六時より五反田イマジカで友人のプロデューサーが手がけた映画の完成試写会を観に行く。
原作は藤沢周、監督熊切和嘉、主演綾野剛、人気沸騰中の村上虹郎。鎌倉が舞台である。鎌倉学園高校剣道部が協力している。剣道を通して親子とはを語る。激烈な作品だ。
そのご報告は明日に。

2017年1月30日月曜日

「沈黙そして」




名曲「恋人よ」を唄った歌手、五輪真弓さんは長崎県五島列島にルーツがあることを、ある番組で知った。五年位前だろうか、五島列島には五輪姓が多いという。
その番組は隠れキリシタンについてのドキュメンタリーであった。

遠藤周作さんの「沈黙」をずっとむかし読んでいたので興味があった。
その小説が映画化され、現在上映中である。

私は先週と昨日と三回観た。
一度目は不覚にも映画の途中約四十分を見落としてしまった。
実は観る少し前にビールをコップ三杯飲んでいたのが効いてしまった。
で、昨日午後途中から見落とし分を観た。
45分待つと次の上映がある、よし遠藤周作さんと監督のマーティン・スコセッシさんに申し訳ないと思い、もう一度しっかり通しで観ることにした。
私より先に観た人と感想を語り合うことになっていた。

週末に借りてきていた「神々と男たち」を見た。実話である。
七人の神父さんたちがテロリストたちに連れ去られこの世から消える。
いちばん年老いた神父はベッドの下に隠れて助かる。
そして現在も生きているとロールスーパーが教える。
アラブや中東の国では日常茶飯事にテロが起きているが、神父たちを何故殺したかは現在も謎だという。

昨夜アンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」を見た。
「沈黙」を観たあとに借りて来た。
三本の映画に共通していたのは、人は人を殺すということ。
信心深い人々が神よ、主よ、イエスよとひたすら祈る。
また「カティンの森」ではポーランド軍人一万数千人が虐殺される。
殺される軍人は十字架を握っている。ナチスが殺ったか、ソ連が殺ったかずっと不明であった。アンジェイ・ワイダ監督の父親の死を題材にしている実話である。
映画は不可侵条約を一方的に破り、宣戦布告もなしにポーランドに侵攻したソ連による大量虐殺としている。
地中に埋められた一万数千人は掘り出されて一人ひとり医学的検証が成された。

「神々と男たち」では、神父たちは神はなぜに沈黙するか、主にその身をゆだねようと聖書を読み一日中祈る。テロリストたちはコーランを口ずさむ、アッラーは偉大なりと。
「沈黙」では日本に布教に来た宣教師が拷問のあげく踏み絵をし、ある者は日本人姓を名乗り生き続け、ある者は決して棄教(転ばず)せずに殺される。
神よあなたはなぜに沈黙をと祈り続ける人間を処刑の地に向かわせる、
日本人奉行やその家来たちは血も涙もない。お坊さんたちは南無阿弥陀仏を唱える。
キリスト教徒と隠れキリシタンとは違うという人がいる。

春になったらその違いを知るために五島列島に必ず行く。
拷問には水責めだとトランプ大統領はいう、果たしてトランプは水責めに耐えられるだろうか。神をも恐れぬ乱暴狼藉に必ずや天罰が下るだろう。
否、神は沈黙しているかもしれない。

昨夜もう一本見たのは「哀しき獣」韓国映画である。もう救いようもない人間たちが金を求めて殺し合う。それを命じる男は敬虔なクリスチャンであり教会のミサに行く。
午前二時を過ぎたところでいつものグラスにギルビーズ・ジンを入れた。
氷とウィルキンソンの炭酸水。アタマの中がすっかりイエスではなくノーになってしまった。

※私は映画館に行った場合は「観」るを使い、借りて来た家での場合は「見」るを使うことにしている。あしからずご了承を。

「沈黙」は素晴らしい作品、是非映画館へ行って観てほしいと思う。イエス、アッラー、神様、仏様、なんだかよく分からなくなってしまった。

2017年1月27日金曜日

「悪法を知るべし」




ちょっとそこの人、呑気に耳掃除なんかしている場合じゃない。
現在国会ではオドロシイ法案が審議されている。
元共謀罪、名を変えてテロ等準備罪法案である。
圧倒的多数を持つ自民党はまた、また、また、また、強行採決するはずです。

オリンピックをテロから守るためならいいんじゃないの、なんて人が多いのだ。
心ある自民党議員や主要官僚の人たちも、こりゃ希代の悪法といわれた治安維持法と同じだと思っているはずだ。
疑わしいだけで逮捕できるのだ、パクった以上は事件にしなけりゃならないので、拷問が生まれる、自白が強要される、当然冤罪が次々と生まれる。
権力者は政敵を追い込むこともできるのだ。

例えば映画やテレビドラマのシーンを監督やカメラマン、録音や爆弾シーンのプロたちが打合せをしている。
シーン15、そこで主人公がさ手製爆弾を作ってんだよ、月島あたりの倉庫で。
その倉庫には他にもマシンガンやライフルなんかもあるんだ。
いわば秘密の武器庫なの。主人公のオンナが覆面作りのプロなのよ、カメラはフランケンシュタインみたいな顔を作っている手の動きをズームアップすんだ。
シーン16は主人公の仲間二人が水上ボートに乗って倉庫に乗り着くんだ。
その中の一人がさ、ターゲットの人間が車で移動するルートを全部知っているわけ、で、地図を広げる。
シーン17は☓☓橋の☓☓の所に爆弾をセットするんだ。
シーン18は△△ビルの2階からスコープをつけたライフルで狙うんだ。
もう一ヶ所は反対側のビルの2階から。引き金を引く時刻は○時△分☓秒だ。バァーンとやろう。
シーン19、車は吹っ飛ぶからスタントは☓△ちゃんだな、やっぱ体が燃えてる方がいいよな。ターゲットの親分役は○□さんだ。ボディーガード役が☓□ちゃんと△☓ちゃん、蜂の巣になってもらう。
爆弾の仕掛けはやっぱりあの名人しかいないね。

なんて話をファミレスとか、煙草OKの喫茶店とか、プロデューサーの自宅なんかでやっていると、オイお前らテロ等準備法違反で逮捕する、ドドッと刑事や警察官がなだれ込んで来る。
えっ、何!ウソー、映画の打合せをやってんだよと言っても、ワッパ(手錠)がガッチリと腕にかかる。
その後留置場で変死とか自殺とかが、ほんの三行ベタ記事で出る。
舞台だって、演劇だって、小説だって同じこと、複数で打合せをしていたら疑わしいこととなる。

仕事の関係で中国や台湾や韓国やロシア、中東やアジア諸国、南米など同じところに年に何度も何度も行っている人は要注意人物としてマークされる(既にマークされている)。ね、だから呑気に耳掃除なんかしている場合じゃない。
かつて治安維持法で逮捕したのは、芸術家、知識人や文化人が多かった。
権力に批判的な政治家、報道関係、宗教関係、思想家たちも危ないのは当然だ。
花火大会、お祭りの打合せだってアウトになる。

大逆事件や横浜事件、松川、三鷹、下山事件のような事が起きるだろう。
作家小林多喜二を拷問で殺したのは築地警察だ。私の仕事場のすぐ側なのだ。
アメリカという国は、いつでも自分たちが“金ヅチ”であり、他国は“釘”だと思っている。
そしてアタマを叩くのだ、いろんな無理難題を押し付けて来るのだ。
左手に聖書、右手には拳銃や核ボタン、週末はしっかり新聞を読んで下さい(産経新聞以外)。

2017年1月26日木曜日

「松方弘樹さんありがとうございました」




「昌三ヨォ、オレはこの頃夜一人になると堅気になりたい思うんじゃ、だがヨォ朝になり若い衆に囲まれるとヨォ、そうもいかんのじゃけん」
「鉄ちゃんヨォ、そげな弱気なこというとったらいけんヨォ、殺られるじゃけん」

正確なセリフではないが、深作欣二監督の大ヒット作「仁義なき戦い」第一作にこんなやりとりがある。昌三とは映画の主人公、広能昌三、山守組若衆。
鉄ちゃんとは、山守組若頭、坂井鉄也。
故菅原文太さんが演じた主人公役には当初、脚本家笠原和夫は松方弘樹さんを起用することを求めていたという。
映画のモデルになった実在の親分美能幸三氏に面も合うし、柄が合うと思っていたらしい。

伝説の映画にはいろんな諸説伝説が生まれる。
広島県呉市の抗争から端を発したヤクザ戦争は、呉→広島と大展開し、やがて山口組VS本多会という巨大組織の代理戦争へと拡大する。
死者20数名を出したこの抗争に命がけで挑んだのが中国新聞の記者たちである。
「ある勇気の記録」として連日キャンペーンを書き続けた。
その功績は菊池寛賞を受賞した。
山守組(実際は山村組)若頭役坂井鉄也(実際は佐々木哲彦)が松方弘樹さんであった。
映画ファンが選ぶ日本映画No.1はこの仁義なき戦いシリーズである。

私は松方弘樹さん死去の報に接しガタガタガクンとした。
天才中野裕之監督と共に2008年に「灯台」という短編映画を製作した。
テヘラン国際映画祭とクラクフ映画祭にノミネートされた。
江ノ島の灯台をいつも見ている私は江ノ島を舞台に映画を作りたかった。
私の親愛なる兄弟分がキャステイングに一役買ってくれた。
親分役が松方弘樹さん、松方さんと共演ならと松雪泰子さんが親分の後妻役を引き受けてくれた(その和服姿は絶品)。
主役の親分の実子役が小林成男さん(現在中国の映画界で活躍中)であった。

低予算、寒い中朝から午前一時頃まで松方さんと松雪さんは江ノ島ですばらしい演技をしてくれた。松方さんは一日中チューインガムを噛んでいた。
中野監督のヨーイスタートの合図が出ると、チューインガムを口の中、上の部分にペタッとくっつけてセリフをスラスラとしゃべった。
カットというとまた噛みはじめた。特技なんだよと言ってニコッと笑った。
映画好きはいいねぇ~と言った。
コンビニの箱弁とペットボトルのお茶だけでいいよ、いいよと言ってくれた。
夢に見た大スターは本当の映画少年であった。
伊吹吾郎さん、村上淳さんも出演してくれた。

「もしもし松方ですが」と甲高い声、私の家に電話が入った。
「花ありがとうね」と言った。
巨大マグロを釣り上げたのを知ったので御祝に花を贈った。
その礼をしてくれた。
ザワザワと風の音、今どこにいるんですかと聞くと、鳥取の海の上だよと言ってカラカラと笑った。マグロを釣っていたのだ。

松方弘樹さん、ほんとにありがとうございました。
私は永遠にあなたの大ファンです。江ノ島の灯台を見るたび心から御礼を申し上げます。
マグロを見るたびきっと思い出します。

「兄貴が来るまでに広島はササラモサラにしとくけん」これは確か第四作の中、刑務所に面会に行った時のセリフ。
ササラモサラとは、丸竹をバシバシ叩くと、バラバラになることから来ている言葉。

今、世界中が仁義なき戦いとなった。そしてササラモサラになって行く。
午前三時二十二分三十二秒、いつものグラスに酒を入れた。
柳生十兵衛、遠山の金さんもよかったなぁ~。合掌。

2017年1月25日水曜日

「コンビニ内はグローバル」




「あ」さんはきっと「阿」、「ご」さんは「呉」、「しん」さんは「秦」だろうか、深夜のコンビニに三人の店員さんがいた。胸章に名があった。
「あ」さんは四十三歳位の男性、「ご」さんは二十五歳位の男性、「しん」さんは六十歳位の男性であった。銀座二丁目である。

お客さんは、ハイ次の人みたいにちゃんと並んでいる。私の前に四人。
一番前が金髪の外人女性、二番目がエジプト人らしき若者男性、三番目がホステスさんらしき三十三歳位の女性。
金髪の女性がパスタをチンしてもらっていて時間がかかる。
「あ」さんがツギノヒトイルカラヨコニイテマッテクダサイと言う。
OH,YESと金髪女性は体を右に2.5歩ずらす。

3.5歩かけてエジプト人らしき若者が、な、なんとおでんを買う。
チプンデトッテクラサイと「ご」さんが言う。
長いトングで器用にシラタキ、牛スジ、ソーセージ二本をつまみ取る。
カラシイルと「ご」さんが聞くと指を二本ピースみたいに出す。
つまり二個ということ、他に肉まん一個とスプライト一本であった。
オシルタクサン(?)エジプト人らしき人、入れ物の真ん中あたりを指さす。
ここ位までとの意思表示。「ご」さんおしゃもじで一回、二回と半分入れる。

三番目のホステスさん、かなり疲れているのかリポビタンDを持っている。
おにぎり二個、マカロニグラタン、チンスルと「しん」さん、しなくていいとホステスさん。バナナ三本、チョコアイスのピノ、トケナイウチニカエッテネと「しん」さん、余計なこと言うんじゃないよという感じのホステスさん。
メロンパンとカレーパンも買っていた。

世界は分断されつつあるがコンビニの中はすこぶる秩序が保たれ、ルールが守られ、グローバル化が進んでいる。人情が行き交う。ケンカなし、もめごとはなし。

「あ」さんはすでにモップを持って床を掃除している。
イートインのテーブルが路地道に向かって一直線にあり、20個位の椅子が逆さまにキチンと揃っている。
私といえば夕刊紙一紙と夕刊二紙、と“かのか”二本、ピスタチオ一袋とサラミ一袋。

ワインレッドのドレスを着たホステスさんがヒールを脱いで、リポビタンDを椅子に座ってゴクッと飲んでいた。私は都会のこんな時間と映画的シーンが大好きなのである。
次の日朝イチで撮影がある、私は寝場所に向かった。

おっともう一人いた、「ポドロフ」さんだ。ロシア人だろうか。
大きなダンボール箱を軽々と持っていた。

2017年1月24日火曜日

「神と紙」




進化はどこも等しく快適な訳ではない。
あえて駅名は言わないが、私が時々使用している東海道線駅前のファミレスで使用するトイレがある。他に学習塾も使う。

昨日夜九時近く私は相模原から帰って来た。
トイレで小用をすませて出て来ると、八十二、三歳のおばあちゃんが顔面をびしょびしょにして出て来た。手持ちのハンカチーフでは間に合わない位濡れていた。
小柄で小太り、ファミレスで食事をしていたらしい。

ちょっとアンタと若いファミレス店員を呼び出していた。
手を乾かす送風機から強風がガバァーといっぱい飛び出して、こんなに濡れたじゃない。ス、スミマセン先日修理したばかりなんですが、申し訳ありません。
二十一、二歳のバイト的女性は店長を呼びに行った。

変なのよここのトイレ、入り口開けたらフタは開くし、立ったらすぐザァーと流れるし、二度目流そうとすると水が出ない、紙が全部流れない、タンクに水が貯まるまでトイレの中で待ってんのよ、おばあちゃんはかなりオカンムリであった。
ドアを開けた途端にトイレのフタがフニャーと開くし、前の方が良かったわとブツブツ言った。
ス、スミマセンこれでお顔をと店長が乾いたタオルを持って来た。
どうやら手を乾かす所の送風が、強風になっていたらしい。

相模原にそっと顔出したのはある人の報告会であった。
頭がボーッとしていたので少しで帰った。
突然ドバッと出したものを吸い取るようなトイレがある。
やはりトイレは水がくるくると回流し鳴門海峡の渦のようになって消えて行ってほしいと思う。情緒感を大切にしてほしいと思う。
トイレから出て来た濡れた老女は、ご友人か知り合い三人でカキフライ定食を食べていた。食欲はすこぶる好調であり、笑い声も大きかった。

トイレといえば最近ここをタッチして下さいというのがある。
手形の表示があり、そこに手をかざすとなかなか流れない、アホみたいに何度も手をかざす。むかしのレバー式なら足で踏んづけるか、ハンドルを手で押せば確実だった。
気取り優先のプロダクトデザインはダメ、酷いのは隣の人と一緒にザァーと流れることがある。バーローオレはオレだと怒ってしまうのだ。
小さな親切、大きな迷惑ともいう。
この頃アチコチで不愉快な思いをしている。

老人に人気の吉永小百合さんも、昼メロで人気の斎藤工も、出るものの臭いは同じ。
シャネルの香りやアラミスの香りはしない。
イエス・キリストだってきっと同じだったはずだ。
神に紙は必要だったかは歴史家は教えてくれない。中学時代にこんなことを教わった。

だろ・だっ・で・に・だ・な・なら、かろ・かっ・く・い・い・けれ、なんだったかは忘れたが、たしか形容詞と形容動詞の活用と思うのだが。男女の下半身は別人額である。
やる・やれば・やってみよう、なのである。ちょっと前へ、短い人もっと前へ。
こんな貼り紙がある寿司屋がある。

2017年1月23日月曜日

「稀勢の里とマーティン・スコセッシ」




人一倍努力し、人一倍挫折し、人一倍悔しい思いをした者だけに許されるものがある。
一筋の嬉し涙だ。感無量という言葉だ。

大関稀勢の里が遂に優勝をした。類い稀なる才能を持っている。
その才能に勢いあれと親方である元横綱隆の里がシコ名をつけたという。
中学を出て入門した少年がこの一番という時に敗れ続けて来た。
ダメだ気が弱い、ダメだ堅くなる、ダメだ勝ちを急ぎすぎると言われ続けて来た。
私もそういう一人であった。

21日(土)、私は座布団の嵐の下にいた。両国国技館内である。
大変お世話になっている広告代理店の社長がプラチナチケットをギャラ替わりだと渡してくれた。ほんの少しの文章を書いただけであった。
私には法外のものであった。
桟敷席(四人分)前から四列目、すぐ横は花道であった。
デザイン界の名人と仕事仲間二人、そして私の四人であった。
大相撲好きの四人である。午後一時から六時までたっぷりと観戦させてもらった。
そして稀勢の里が勝ち、絶対勝つと思っていた横綱白鵬が平幕貴ノ岩に完敗した。
大横綱白鵬時代が終局に向かっていることを目の前で観た。
国技館は割れんばかりの喚声であった。
そして昨日結びの一番で白鵬のかぶり寄りに耐えて土俵際で逆転した。

19年振りの日本人横綱の誕生である。
インタビューに応える稀勢の里の目から一筋の涙がすーっと流れて落ちた。
なんて美しい涙なんだろうと胸が熱くなった。
初土俵以来不戦敗が一日だけ、後はずーっと休まず土俵に上ったという、類い稀な強い体と強い気持ちの持ち主であった。
たくさんお土産まで頂いて午後八時四十分頃帰宅し、御礼の電話を入れた。

ひと息入れて、オペラ「タンホイザー」のDVDを観た。
ワーグナー、バイロイト祝祭劇場のものである。
頼んで手に入れてくれたのが届いていたので、すぐに観始めた。
188分、壮大な愛と信仰の物語、ヴィ―ナスと愛欲に溺れた男を救う、純心な女性の身を賭した愛。私がなんでオペラかというと、日本に初めてバイロイト祝祭劇場をそっくり引っ越しさせた奇跡の男が私の大先輩で、総勢約300名を日本で初公演させるという、この劇的なというか奇跡的なことをやり遂げた実録を一冊の本にするための、いわば勉強としてであった。
台所でガサゴソやっている愚妻がひと言、音が大きすぎるわよと言った。
まったくアカデミックでない。

トランプ新大統領の16分間の演説、それを書いたスピーチライターは31才だという。
アメリカファーストばかり、トランプによってアメリカ合衆国は合衆国でなくなるのだろう。
いろんな民族が合衆した国なのに、白人至上主義という一世紀も二世紀も先祖返りをするという無知なものであった。
大好きなマーティン・スコセッシ監督の「沈黙」が遂に公開された。
で、TSUTAYAに行きスコセッシのアカデミー受賞作品を二本観た。
一本は「タクシー・ドライバー」もう一本は「ディパーテッド」だ。

ギャングやマフィア、組織団体を撤廃するためにネズミという囮を放つ。
その中でこんなセリフがある。「FBIはキノコのようなもんだ、暗いところにいる」と。
アメリカはネズミ国家、囮国家である。また、CIAは更に増して悪質である。
民主主義国家が独裁国家になる。

SNSを使って戦ったトランプ陣営は、SNSによって意外に早く追い詰められるという皮肉を味わう。インターネット社会はあっという間に世界全国に拡散する。
それ故世界60各国で数百万人のデモが生まれる、それは更に数千万になっていくはずだ。いい映画は何度観てもいい。

ちなみにディパーテッドとは「死者」の意味。
アメリカの民主主義がディパーテッドにならない事を願う。

2017年1月20日金曜日

「手作りの力」




世の中にはランクというのがある。
松・竹・梅とか、上・中・下とかである。ここに特別・中等・初等というランクがある、少年院のことだ。

一月十九日東京新聞に「誓いの成人式」という見出しのコラムがあった。
横須賀市に久里浜少年院というのがある。特別少年院、通称「トクショウ」という。
特別というのだから不良少年の中でも特別の少年が入所する。
ヤクザ社会に向かう少年であればエリートコース、いわば東大法学部を出たようなものである。
新成人53人が、保護者、保護司、教誨師、職員ら130人が見守る中でめでたく新成人となった。

久里浜少年院には現在、非行度の深い少年や外国人ら16才から20才前後の約90人が在院しているという。久里浜少年院は海のすぐ側にある。
水練がキツく、どこよりもツライといわれている。
さて、彼等を世の中はどう迎えてあげるかである。
年少(ネンショウ)出だからぜひ我が社にとか、我らの店にとか誘ってはくれない。
逆にヤクザ社会からぜひ我が組へ、我がグループ、我が会へとの誘いの方が多いかもしれない。私は出所した新成人たちを空腹にしないでと世の中に願う。
何故なら空腹はまた犯罪を生むからだ。

世の中には特少を出てから立派な経営者になったり、一流の役者になったり、教育者になったり、一流のシェフや板前や名人、達人といわれる職人になったりしている人がいくらでもいる。

私は過日見たNHKのドキュメンタリー番組「ばっちゃん」を思い出した。
広島のとある街に住むばっちゃんは八十歳を過ぎている。
ばっちゃんは午前三時頃に起きて、一日何度も食事を作る。
空腹になった非行少年、少女や家族と不調和な若者や、社会生活と手く付き合えない若者たちが、ばっちゃんの作ってくれる手作りの料理を食べに来るのだ(無料である)。
また社会に出てちゃんと暮らしている若者たちがばっちゃんに会いに来る。
ばっちゃんのごはんが食べたくなったからと、番組ではばっちゃんのところから300人近くが育って行ったという。

きっと昨日も今日もばっちゃんはご飯を作り続けているだろう。
ご飯を食べさせてあげなきゃいかんのじゃけん。
子どもは腹を空かしているのじゃけんのぉ~と大きな声で笑った。

私はこんな人になりたくてもなれなかった。とてもなれなかった。
が、いつでも弱者の側にいて少しでも世のために尽くしたい。
人の恩恵で生かされて来た、無学で貧しき者としての役目だと思っている。
ばっちゃんはその大いなる見本だ。

久里浜少年院を出た若者たちに幸多かれと願う。
くじけるな、めげるな、あきらめるな。我慢だよ、世の中には善い人がたくさんいる。
喧嘩で使った根性を仕事に使えばきっと負けない。手作りのおにぎりには愛がある。
その味は一生忘れない。コンビニで買ったものではダメ。

2017年1月19日木曜日

「朝日の人」




昨年の末のことであった。何だいテレビを見ると小池のババアばかりじゃねえか、チャンネル替えてくれ、と言ったのは私では決してありません。
おすし屋さんにいたお客二人の内一人のオジサンです。
築地の側なのでイロイロアタマに来ていたのかもしれません。

そうだよ都知事選が終わってからまい日、小池、小池、小池だからなと、もう一人のお客さん。オヤジゲソ焼いてくれ、オレはタコブツだとご注文。
もう移転はできねえな。マッタクどうなんてんだ東京都はヨォ。

で、私からオジサンたち築地の関係の人と聞けば、全然関係なく朝日新聞の人でした。
そうか本社近いしなと思った。朝日はダメだねと言うと、そうダメですと素直に言う。
全然ダメなんだよとイカのゲソ焼きのオジサン。
タコブツのオジサンは、薄くなった頭をグリグリしながら、いいんじゃないの朝日は永遠に朝日なんだからと訳の分からないことをつぶやく。
酒もう一本、ウーロンハイもう一杯と二人は続く。

私はかねてより朝日を見限っていたので、まあこんなオッサンたちが碌に取材もしないでヘコタレた記事を書いては、ボツをくらっているんだろうと思った。
二人の年齢は、一人は四十七、八歳、一人は五十二、三歳であった。
赤貝とホタテを一人が追加し、一人が穴子焼きを追加した。
店のオヤジが穴子は白焼きそれともタレでと言えば、ハーフ&ハーフと言った。
なるほど出てきた穴子は一匹丸ごと、縦に真っ二つに分かれている。
半分は白焼きでその上にワサビがのっていて、もう半分にはタレが染み込んでいた。

昨夜音楽関係の人とそのおすし屋さんに行った。
大作曲家の先生のところから独立したのでその御祝いをした。
防災の話、歴史の話、音楽の話、広告界の話と話は弾んだ。
お刺身を食べてさて次はとなった時、穴子焼きを頼んだ。
白焼き、それともと言った。一瞬思案していると、ハーフ&ハーフでいきましょとオヤジさんが言った。あっ、そうかと思った。

その日読んだFACTAという雑誌に朝日新聞27万部減という記事があった。
あの朝日の人たち新年早々どこかへ飛ばされていないかとふと思った。
ゲソ焼きとタコブツを頼もうと思ったのだが、話は関ヶ原の合戦に飛んでいた。

2017年1月18日水曜日

「葛城事件」




♪~馬鹿いってんじゃないわ 馬鹿いってんじゃないよ 三年目の浮気ぐらい大目にみろよ…。
男女デュエットの歌を一人の男だけで唄っている。
女性が唄うところはカラオケの音楽だけが流れる。男は杖をついて唄っている。
スナックのママがいて男のお客が三人いる。

男は突然暴れ出す。
テメエラ散々オレをコケにしやがってと、オレだってむかしは、むかしは、むかしはと言い、ふざけんじゃネェ―とテーブルの上のウィスキーやら水割りやら灰皿をぶっ壊す。
ママはオロオロとしながらもう来ないでと言う、客の三人は店の外に逃げ出す。

男の名は「葛城」、金物店をずっと営んでいた。
結婚をし二人の男の子を授かる。
家を新築し友人たち親族たちを呼んでパーティーをする。
庭に子どもの成長を願ってミカンの木を植える。

それから20数年経つ、成績優秀が自慢だった長男は結婚をし二人の子を授かる。
が、営業マンとしての成績が上がらずリストラされる。
妻は勿論、父と母にも内緒にして、まい日出社を装う。
が、やがて心を病み自殺する。
父親は事故死だと言い張る。

葛城家は地獄に向かって崩壊して行く。残った弟は物静かである。
が、まい日酒を飲んで母親を殴る蹴る父を見て心が壊れて行く。
二人は逃げてアパートに隠れるが父に見つかり家に連れ戻される。
そしてまた、酒と暴力。

葛城金物店は閉店する。
オレにだってこんな幸せがあったんだと、むかし家族四人で撮った写真を見る。
父は笑い、母も笑い、兄も弟も笑っている。
行き場のない悲しみ、やり場のない怒り。ご近所の好奇の目と口。
外から見ると幸せな2階建ての家の中は生き地獄となっている。

ある日弟のところに通販で買ったサバイバルナイフが届く。
それを持ち弟は商店街のアーケードに向かう。
すれ違う人、人、人を無差別に斬り、刺しまくる。男女の区別なく、年齢の区別なく。
そして弟は死刑囚となって、早く執行してくれて願い出て、異例の早さで死刑は執行される。

秋葉原の事件と、宅間守の事件を思い出す。
無差別殺人と死刑執行の異例の早さ。
隣人たちからは忌憚され噂される。母親の心は崩壊する。
そんな姿の女房に男はやらせろと襲いかかるがヤメテーと突き飛ばされ、私ははじめからアナタが嫌いだったと言われる。やがて妻は施設へ入る。

ある日男はコンビニで買って来たつけとろざるそばをズルズルとすする。
何を思いついたのか、掃除機を持って庭に出る。
首にグルグルコードを巻き持ち出した椅子の上にのりそれを蹴り倒す。
大きく育ったミカンの木にかけられたコードはボキッと折れてしまう。
死ねなかった男、しばしボー然としていたが部屋の中に戻り、食べ残ったそばをズルズルとすする。
弟と獄中結婚した若い死刑廃止論者が訪ねて来るが、男はその若い女性にもやらせろと襲いかかる。

壊れてしまったのだ、何もかも、過去も現在も未来も。
そばをすする音と姿で映画は終わる。

昨年見落としていた、評判の作品「葛城事件」だ。
新作2泊3日、脚本・監督は「赤堀雅秋」、また一人凄い監督を知った。
映画ファンなら絶対見なければならない問題作だ。出演者は内緒である。
すばらしい役者たちだ。

いつものグラスにギルビージンを入れた。夫婦も親子も、家族も隣人間も。
たった一つのことで壊れていく。
シェイクスピアの悲劇の一つ、オセローがイアーゴから告げ口され、たった一枚のハンカチーフで壊れてしまったのを思い出した。
「キミは、営業マンに向いていないんだよ」たったひと言が始まりだった。
弟思いの兄、兄にコンプレックスを持ち続けていた弟、愛のない夫婦、崩壊の芽。

2017年1月17日火曜日

「ワンタン」




雲呑(ワンタン)ほど見た目、気合の入っていない中華料理はない。
へらへらして、無気力で、ユラユラしている。

あのヤローワンタンみたいな男だなというのがいる。
近い人間にハンペンみたいな男がいる。
ワンタンもハンペンも裏表がないので、きっと正直で誠実で真面目な人間が多い。
自己主張をあまりしないので主役は演じられない。
が、ハンペンの入っていないおでんは魂の入っていない仏像に近い。

昨日会社の仕事仲間二人と、早い、安い、旨いの中華料理店「菊凰」に行った。
シュウマイ二個ずつ、カニ玉三等分、エビチリ三等分、今年はじめての菊凰は期待通りである。あれこれ話をした後、ヨシ、ラストにチャーハン三等分、スープ代わりにワンタン三等分ということになった。

ワンタンはつかみにくい、箸ではつかめない、スルッと逃げるのだ。
まるでクラゲのように。そこでレンゲというのを登場させる。
だがレンゲだけだとやはり取りにくい。一発でレンゲの中に入らない。
アレッと逃げるこら待てと追うのだがヘニャヘニャっと笑いながらすべり落ちる。
で、左手にレンゲを持ち右手に箸を持つ、レンゲを45度位にして下を向かせ、そこに箸でワンタンをつかんでサッとレンゲにすべり込ませる。

大ぶりのワンタンが威風堂々とレンゲ内にはみ出し気味に広がる。
ワンタンの中にはお肉がしっかり入っている。
マンガのヒット作に「ゲゲゲの鬼太郎」というのがある。
その中に“一反木綿(イッタンモメン)”というヒラヒラしたお化けがいる。
ワンタンはイッタンモメンがお肉を食べて腹がふくらんだ状態に近い。

菊凰のチャーハンは絶品なので、ワンタンとの組み合わせは大ヒットであった。
三人それぞれビールにお酒にウーロンハイ。私はお酒一合半。シメテ約9,000円。
ちょっと名のある中華料理店なら24,000円位はするだろう。

今年も私は菊凰に通うのである。今度はワンタンメン単品と思っている。
銀座昭和通りにある大衆向け中華料理、この店には実はかなりの人たちが遠くから食べに来る。ランチは800~1,000円位でイロイロ選べる。特別ヤッホーなのだ。

2017年1月16日月曜日

「ラーメンの食べ順だって」




午前四時十九分〇五秒ボールペンを持つ。
その少し前窓を開けると、キィーンと冷気が入って来た。
日テレをつけるとおはよんが始まっており、各地の降雪状況が伝えられる。
八十歳を過ぎている老人が雪の下敷きになって死んでしまったことを告げる。
外遊をしている安倍首相がお金をバラ撒いていることを知らせる。
毎年繰り返されるセンター試験が雪で混乱している。

新作「日本一悪い奴ら」と新作「シチズンフォー」を午後十時半から見た。
「日本一悪い奴ら」は北海道警察で起きた実話を基にしている。
拳銃の押収ノルマを達成するために警察とヤクザが、どっちがどっちか分からないほどどっぷりと癒着する。
この事件を扱ったニュースは当時大々的であったが、結局ナシのつぶてのように全容は解明されずウヤムヤとなった。

「シチズンフォー」は、ロシアに亡命前のエドワード・スノーデン本人が主役を演じたドキュメンタリータッチの映画だ。
ネット社会には、国家機密も国家と国家の機密もすべて暴露される。
ロシアがアメリカに強気になりはじめたのは、スノーデンを手に入れたからだ。
いわんや個人情報などは丸裸だ。
勿論現在の日本でも同様だ。

プライバシーは死語となっている
すでに自由の国とは、すべてのプライバシーがない国ということだ。
新聞や雑誌は何を読んでいるか、朝食は、昼食は、おやつは、酒や料理は、煙草は、デザートは、浮気は、旅館やホテルは、マンションは、アパートは、SEXは、体位は、変態行為は、恋人同士の関係は、夫婦関係は、セクハラは、パワハラは、不倫は、金の使い方は、貴金属やファッションは、カードは、TSUTAYAのカードで借りる映画は、親子関係は、ピーナツは何粒食べて柿の種はいくつ食べるか、ラーメンを食べる時メンマ、チャーシュー、スープ、メン、ナルト、ノリ、モヤシの順か、それともスープ、メン、メンマ、チャーシューの順か、煮玉子は最初か途中か、それとも最後か、そんなことまで調べられる。

PC、ツイッター、フェイスブック、メール。
食べログ、アマゾンやヤフー、楽天やニコニコ動画やスケベなチャンネルなどを使用している人は丸裸となっている。
今年テロ防止という名目で稀代の悪法「テロ防止共謀罪」が強行採決されるだろう。
誰でもいつでもパクることができる。

我々は監視社会の中にいる。
どんな本を読んで、どんな映画や演劇を観て、どんなセミナーに参加して、どんな教室に通っているか。コラッ!ダメだぞそんなところに行ってイケナイことをしたら。

若者たちの間に梅毒が急増しているという。特に若い女性に多いという。
何故か、考えれば分かるはずだ。

2017年1月13日金曜日

「週末におすすめの映画2本」




正月休み、映画を15本レンタルして来てそれをすべて見た。
頭の中を空っぽにするには私の場合映画だ。準新作7泊8日、5本で1,000円だから3,000円である。

その中でぜひおすすめしたいのが「火の山のマリア」
夫婦とは、親子とは、文明とは、富める者と貧しきの悲哀を表現する。
南米グアテマラの山の中、小さな集落でコーヒー豆を摘んで売って生計を立てている父と母、その娘の物語。
娘は18才位である。

貧しい山の民のコーヒー豆を買いに来る都会人に目をつけられて嫁になることになる。
父と母は都会人に精一杯のもてなしをする。もてなしといっても安酒と粗食でしかない。
何しろ電気すらない。村人たちは火の山に食物がとれますように、コーヒーがとれますようにとひたすら祈る。人生の行方は霊導師のお告げが頼りだ。

娘には想いを寄せる若者がいた。
二人は一度だけ結ばれる。若者は山を下り都会へ働きに行く。
母は娘に一生懸命お化粧をし、新しい服を着せアクセサリーをつけて嫁入りに備える。
が、娘は若者の子を宿す。都会に行ってしまった若者は知るよしもない。
その事を知った父と母は、都会人との結婚の行方は、おなかの中の子の行方は、あどけない娘は。
この先はぜひ借りて来て見て下さい、泣かずにはいられません。

もう一本「最愛の子」
実話を基にしている。
中国では子どもの誘拐ビジネスが盛んであることはニュースなどで知っていた。
結婚をした夫婦には三歳くらいの男の子がいた。
街の片隅で粗末なインターネットカフェのようなものを営んでいる父親、別れた妻が時々子に会いに来る。
妻は再婚している。ある日父親がちょっと目を放した隙きに愛する我が子が消えてしまう。
その日から父は我が子を探す。狂ったように。
広大な中国の中で探す。

映画はドキュメンタリータッチで現代中国の光と闇、正常と狂気、法と無法、生みの親の愛、育ての親の愛を鋭く慈悲深く、無情と非情にまみれて表現する。
中国映画恐るべし、カメラは農村から山村そして大都会へと展開する。
追う親、逃げる親、それらを追い詰める人、人、人、執念の果に数年後、遂に我が子を誘拐する場面とおぼしき映像に出会う。

実話であることをニュース映像を見せながら描く。息つくひまもない。
130分の映画の行方は。泣かずにはいられない。夫婦とは何かを考えさせられる。
この映画もたった一度の男と女の営みが生むドラマでずしんと胸に刺さる。
これ以上は借りて来て見て下さい。2本で400円です。

2017年1月12日木曜日

「ダイヤのワンペア」




昨日深夜帰宅。午前二時NHKをつける。トランプの半年ぶりの記者会見を見る。
その前にオバマ大統領51分間の最後の演説ダイジェストを見ておいた。
立て板に水の如し、民主主義の大切さを話していた。

さてトランプだが57分間の記者会見はもうサイテーであった。
前代未聞、弁護士まで出した。自分の企業経営と大統領職との関係についてを説明させるために。息子たちに経営させるから法は犯さないと。メディアとの対立を鮮明にした。

日本のメディアと違ってアメリカのメディアは徹底的に攻めまくる。
ロシアと握っているのでは(?)
プーチンと共に反ヒラリー・クリントンのハッキングやったのではと、トランプは口を乾かし、目は泳ぎ、声を荒げた。
アメリカの終わりの始まりの記者会見であった。
日本とメキシコはやっつけるみたいなことを強調した。
つまりトランプ次期大統領は、親ロシア、反日、反メキシコ、反中国を鮮明にした。
次から次にロシアからのハッキングに関してメディアの集中砲火的質問を浴びせられると、会見を終えて消えた。
NHKのニューヨーク支局、日本の解説委員はまるでお通夜のようになっていた。

例えて言うなら、医師免許を持ってない人に大手術をされるとか、司法試験に受かってもない人に命を託すとか、フグの調理師免許を持っていない人の捌いたフグをバクバクたべさせられる、そんな不安を抱える状況になっていた。
トランプがいろんな疑惑を持っていることをアメリカのメディアは追う。
ニクソンと同じ途中退場になるのでは(?)
アメリカから民主主義、移民主義、アメリカンドリームを奪ったら、原住民であったインディアンを殺しまくった騎兵隊国家だ。
もっともその象徴であるカスター将軍隊はインディアンに皆殺しにされた。

さあ、さあ、どうする日本国は。トランプは買いか、売りか、じっと自滅を待つか。
こんなことを2日続けて書きたくはないが、やはり今後の我々に大いに影響する。
何しろ政治経験のまったくない人間が、世界一の強国のリーダーになるのだから、無関心ではいられない。それにしてもオバマという政治家の演説は天才的だ。
オバマがスリーカードなら、トランプはダイヤのワンペアだ。

あ~嫌だ嫌だと思ったのは午前三時であった。
トランプカードのダイヤは“お金”のこと。
トランプの頭の中はそのことしかないのだろう。(文中敬称略)

2017年1月11日水曜日

「キャバレートランプ」




黒船が浦賀沖に来てブォーと汽笛を発した。
この一発で夜も眠れずと戯れ歌が町民の間で流行った。
島国日本に外国人が攻めて来たのは、蒙古襲来が二度あったきりであった。
神風が吹いて10万の大軍をやっつけたというのはウソらしい。
近代の研究によると、一万人位が攻めて来たがちょいとオドシて予定通り退却しただけだと。その頃台風が来る時期ではなかった。
二度目は少しばかり攻め合って鎌倉時代の兵たちが退却させたという。

歴史の話は半分位、その半分、そのまた半分位が原寸に近い。
私の大ボラに近いと思う。兵法の一つに、こりゃーどえらい強そうだと思う相手には接近肉薄せよと言う。
なんだい大した事はネェーじゃないか、酒は飲むし、酔っ払うし、女体に弱いスケベだし、一人っきりになるのを怖がるし、疑い深い小心者じゃないか。
遠くから見ると威風堂々、巨大な影に怯えていたが損をしてしまったというのが殆どだ。接近する勇気があるか、密着する度胸があるかだ。
戦は相手の大将の首を取った者の勝ち、大軍も大将がいなくなれば蜘蛛の子を散らす如くとなる。

今、世界中がトランプ次期大統領の40字のツイッターに、夜も眠れずとなっている。
とりわけ輸出大国日本はアタフタ、オタオタ、クタクタだ。
キャバレーの一座みたいなトランプファミリーはハリボテだ。
ハラハラもドギマギもすることはない。
空樽の音は大きいというが、トランプという空樽は実はスコーン、スコーンと大きな音を出す。さほど中身がなく、接近密着すればその実体が分かるはずだ。
日本国の大将がドタバタ駆けつけたのは愚の骨頂だ。
外交はナメられたら終わり。

豊臣秀吉が伊達政宗のヤローあいさつに来ねえじゃネェーか、素っ首落としてやると怒り頂点の頃に、いや~遅くなりやした。
伝聞では白の死装束で現れたというが、これはきっと講談の話だ。
ともあれ伊達政宗は一目も二目も置かれる存在となった。

キャバレートランプ一座の現状を見ると、ヒラリー・クリントンは、如何に自分が人気なく負けたことの意味を知るだろう。
日本の政治家や外交官はアメリカ人の前に行くとイジメられっ子のようになり、タカリ、ユスリ、カツアゲに屈してしまう。
2メートル以上もあるハッタリトランプに、机の上をシャラップ!ドーンと叩かれると、へ、へ、ヘイとすべてを聞き入れてしまう。だって怖いんだもんと。

ラスベガスのモーターショーで、トヨタの豊田章男社長が顔を引きつらし、声を震わせ、私たちは100億ドル近く(約1兆2000億)を投資しますと発表した。
逆にシャラップ、と台を叩いて見せてほしかった。
ドタバタの日本の大将、アタフタの日本最大の企業の大将にガックリとした。
キャバレートランプは一対一になると、気弱いハッタリ屋であることを自分がよく分かっている。だから身内や側近しか信用しない。
多分アメリカの歴代大統領でいちばん小心者だろう。
だからガキのようにツイッターをする、面と向かって言えないのだろう。
習近平、プーチンの敵ではない。キャバレートランプの店仕舞いはそう遠くはない。