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2017年1月10日火曜日

「小鳥とペン」



2017年1月10日400字のリングのゴングが鳴った。
猫の額ほどのリビングの片隅におもちゃを入れたダンボール箱がある。
その中にあるいくつかのぬいぐるみが私をジッと見ている。
江ノ島の水族館で買ったピンクのイルカは口を開けたままだ。
ピカチュウは大きな目を開けたまま、三毛猫はものかなしげだ。

ずっとむかし子どもたちに買ったものが、その子らに引き継がれてきた。
つまりぬいぐるみたちはずっとずっと同じ表情とポーズなのだ。
ミッキーマウスもずっと手を広げたままだ。


年が明け近所を歩いて見ると、デニーズは味噌ラーメン屋に、イタリアンレストランがメモリアルホールに、我が家の家電の世話をしてくれていた電器店が貸店舗となっていた。駅伝が走る道路にあったサークルKが閉店し、ブックオフはジャガーのディーラーになっていた。

一個50円で買ってきた傷もののリンゴを細かく切って小さな庭にばら撒くと小鳥たちが集まってきた。二羽ずつだから夫婦なのだろう。
あ~この風景は生きているなと思った。ぬいぐるみたちには意志がない。

そんなの関係ネェ~、ハイオッパッピーと言って人気を博したパンツの芸人はすっかり姿を見なくなったが、“そんなの関係ネェ~”この言葉ほど今の日本人を表しているのはないと思っていた。自分に関係ないものは、関係ネェ~社会となってきた。
人間と社会のぬいぐるみ化と私は言いたい。
無思想、無関心、無表情、無言、そして無情。

御用学者たちはこの10年で日本人の健康は飛躍的に向上した、それ故今後は75歳を高齢者とするのはどうだろうとなった。年金が払えなくなった国家が年金の支払いを引き上げるのだ。若者たちの未来に年金はない。
日本以外の国なら大変なことなのだが、そんなの関係ネェ~と若者たちは思っているのだろうか。

新しい年、私はどう生きて行くべきかリンゴを突っつく小鳥たちにたずねた。
用心深くキョロキョロする一羽の小鳥が言った、自分の意志を持てと。
リンゴをばら撒いてくれる人はいないと思えと。

ピコ太郎はリンゴをペンで刺してアイディアを発見した。
ならば私はペンで時代を刺して新しいメッセージを発信して行こうと思う。

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