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2017年1月23日月曜日

「稀勢の里とマーティン・スコセッシ」




人一倍努力し、人一倍挫折し、人一倍悔しい思いをした者だけに許されるものがある。
一筋の嬉し涙だ。感無量という言葉だ。

大関稀勢の里が遂に優勝をした。類い稀なる才能を持っている。
その才能に勢いあれと親方である元横綱隆の里がシコ名をつけたという。
中学を出て入門した少年がこの一番という時に敗れ続けて来た。
ダメだ気が弱い、ダメだ堅くなる、ダメだ勝ちを急ぎすぎると言われ続けて来た。
私もそういう一人であった。

21日(土)、私は座布団の嵐の下にいた。両国国技館内である。
大変お世話になっている広告代理店の社長がプラチナチケットをギャラ替わりだと渡してくれた。ほんの少しの文章を書いただけであった。
私には法外のものであった。
桟敷席(四人分)前から四列目、すぐ横は花道であった。
デザイン界の名人と仕事仲間二人、そして私の四人であった。
大相撲好きの四人である。午後一時から六時までたっぷりと観戦させてもらった。
そして稀勢の里が勝ち、絶対勝つと思っていた横綱白鵬が平幕貴ノ岩に完敗した。
大横綱白鵬時代が終局に向かっていることを目の前で観た。
国技館は割れんばかりの喚声であった。
そして昨日結びの一番で白鵬のかぶり寄りに耐えて土俵際で逆転した。

19年振りの日本人横綱の誕生である。
インタビューに応える稀勢の里の目から一筋の涙がすーっと流れて落ちた。
なんて美しい涙なんだろうと胸が熱くなった。
初土俵以来不戦敗が一日だけ、後はずーっと休まず土俵に上ったという、類い稀な強い体と強い気持ちの持ち主であった。
たくさんお土産まで頂いて午後八時四十分頃帰宅し、御礼の電話を入れた。

ひと息入れて、オペラ「タンホイザー」のDVDを観た。
ワーグナー、バイロイト祝祭劇場のものである。
頼んで手に入れてくれたのが届いていたので、すぐに観始めた。
188分、壮大な愛と信仰の物語、ヴィ―ナスと愛欲に溺れた男を救う、純心な女性の身を賭した愛。私がなんでオペラかというと、日本に初めてバイロイト祝祭劇場をそっくり引っ越しさせた奇跡の男が私の大先輩で、総勢約300名を日本で初公演させるという、この劇的なというか奇跡的なことをやり遂げた実録を一冊の本にするための、いわば勉強としてであった。
台所でガサゴソやっている愚妻がひと言、音が大きすぎるわよと言った。
まったくアカデミックでない。

トランプ新大統領の16分間の演説、それを書いたスピーチライターは31才だという。
アメリカファーストばかり、トランプによってアメリカ合衆国は合衆国でなくなるのだろう。
いろんな民族が合衆した国なのに、白人至上主義という一世紀も二世紀も先祖返りをするという無知なものであった。
大好きなマーティン・スコセッシ監督の「沈黙」が遂に公開された。
で、TSUTAYAに行きスコセッシのアカデミー受賞作品を二本観た。
一本は「タクシー・ドライバー」もう一本は「ディパーテッド」だ。

ギャングやマフィア、組織団体を撤廃するためにネズミという囮を放つ。
その中でこんなセリフがある。「FBIはキノコのようなもんだ、暗いところにいる」と。
アメリカはネズミ国家、囮国家である。また、CIAは更に増して悪質である。
民主主義国家が独裁国家になる。

SNSを使って戦ったトランプ陣営は、SNSによって意外に早く追い詰められるという皮肉を味わう。インターネット社会はあっという間に世界全国に拡散する。
それ故世界60各国で数百万人のデモが生まれる、それは更に数千万になっていくはずだ。いい映画は何度観てもいい。

ちなみにディパーテッドとは「死者」の意味。
アメリカの民主主義がディパーテッドにならない事を願う。

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