都内最大規模を誇る物流施設の竣工のお手伝いを経験させてもらった。物流は新時代へと大進化を遂げている。物流施設の中を見る機会があった。そこは人間ドラマの劇場であった。物流施設の中には“お酒を飲む”場所以外は殆どあった。郵便局、コンビニ、病院、お風呂、食堂、理容室、マッサージ機、テレビルーム、一人部屋、二段ベッドが一つある部屋、二つある部屋、カプセルルーム。個人で借りている部屋には個人の名札、何年も借りている人がいる。会社で部屋も借りているところにはいろんな会社名、○△運送、○□運輸、○□配送などさまざまだ。女性の姿は殆どない。男社会である。パパさん、お父さん、おじさんたちタフな男の人たちが全国からあらゆる物品を運んでくる。男たちはとにかく疲れている。少しでも眠りたい。静かに、静かにと言われた。テレビがあっても見る人はいない。アイマスクをして仮眠する。ベッドルームの布団は自分のを持ち込むために、、出て行ったあとは何もない。木のベッドと小さな荷物入れ。会話はない、笑い声もない。言い争いもない。ひたすら静かであった。この施設に行き来するドライバーたちには、 家族ある人、恋人のある人、いろんな人生を抱えている人たちがひたすら荷物を運ぶ。私はこの施設を見た日から、運送する運転手さんに敬意を持った。来るはずの荷物が遅れても、 あるいは電話が入り次の日になると言われても、いいですよ、よろしくお疲れさんと言うようになった。仕事場の側に、トラックが仮眠のため停めてあって、タクシーを停めるのに不都合であっても、どうぞゆっくりとと思うようになった。すぐ側にヤマト運輸があるのだが、やっぱり心の中でお疲れさんと言うようになった。睡眠不足、過重労働で大きな事故がよく起きるが、施設を見てからニュースに接するたびに、アイマスクをしている屈強な男たちを思い出した。 Amazon の登場で少しでも早く届ける競争になった。産地直送が盛んになった。とれたての魚をすぐ食卓にというが、実は魚はとれたてより1日置いた方が味はいい。モーモー鳴いていた牛、ブーブー言っていた豚、人間はそれをブチ殺し、イキイキ出来立てのハムやソーセージとして売る。肉も産直でと高価格で売る。肉は日を置いてギリギリで食した方が旨いのだが、早さを競う。一本のボールペン、一個のゲーム、一冊の本もアイマスクで仮眠をする人たちが運ぶ。時あたかもお中元の季節。繁忙期である。私は配送するトラックに向かって、お疲れさんと静かに声をかける。運送の世界は人生劇場である。もっと早く見ておけばよかった。近々ある施設が竣工する。近代的設備が整っている。だが、静かに、静かには変わらないだろう。 寝ている人最優先なのだ。
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