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2020年5月14日木曜日

第61話「私は周戦」

私は「周戦」である。終戦とは違う。新型コロナとの戦いに終戦はないことを、今後しっかりと身につけなければならない。グルグルと周回を繰り返す戦いが、このウイルスとの戦争である。時には大きく動き、時には静かに小さく動き回る。私周戦はこんな経験をしたのは、新型コロナウイルスがはじめてである。モノゴコロがついた時から戦さに明け暮れて来た。その場合はちゃんと相手が見えていたので、勝つための戦略とか戦術が成り立った。原始人類から現在の人間まで、歴史は戦いの歴史である。古代エジプト・ギリシャから現在に至るまで、人と人は戦争を周回させて来た。それはまた疫病との戦いでもあった。人間が動物である以上、疫病から逃れられない。人間が英知を集め疫病を克服しても、疫病も進化し人間を克服する。追いかけっこなのだ。“悪女の深情け”とか“情悪男の泣き落とし”と同じで、どこまでもヒタヒタとつきまとう。最後は生きるか、死ぬかになる。疫病を生むウイルスは“ヒトのココロ”を持つがごとく、あざ笑うように拡散する。疫病はほぼ制圧して来たが、その種は生きつづけている。ウイルスは完全にはくたばらない。人間でいえば、ジメジメと嫉妬深く、ヌメヌメと掴みどころがない。嫌な奴なのだ。見えざる手によって首を絞めるがごとく、人間を苦しめる。人間という字は、人と人の間だとしたら、今回の新型コロナウイルスは、人と人との間を2メートルに引き離した。社会と会社、人間と人間、家庭と近所、家族や夫婦、それらの距離が劇的に変化するだろう。この変化に応じる戦略と戦術がないものに明日はない。出口戦略と言うが、出口などはない。新型コロナウイルスはグルグルの同心円状だからだ。拡散するその周囲が大きくなったり、小さくなったりするだけだ。第2波、第3波と回る。人間は人類が進化した“動物”であることを、改めて知らねばならない。(動物界では唯一なんでも飲み食べる)私周戦は想像する。今日14日、解放された人々が、まあ〜長かったな、退屈だったな、もううんざりだよ、さあ、まあ一杯、マスクなんか取れよ、そんな2メートルも離れないでよ、お酒が届かないじゃん。えっ、国からのマスク2枚届いてないの、ウチもそうだよ。あ〜やっぱり外で飲む酒は旨いな、家でさ女房がお酌してくれたんだよ、ニタッと笑ってさ、不気味だったよ、命を大切にしてよだって。テレワークってやだね、このまま会社に来なくていいよ、と言われそうでさ。明日上司に呼ばれてんだよ。私周戦は久々にカミュの「ペスト」を読んだ。何をすべきかと言えば「自分のできることを誠実にする」と言うことであった。それをグルグルと周回させて行くしかない。一人ひとり、そしてみんなで。新型コロナウイルスと「共生」する。孫子曰く「相手を知り、自分も知って戦わないで勝つ」。まずは、堅気の人は手を洗う。ヤクザ者は、足を洗う。そして次へ……。すこぶる誠実に生きて来た、私周戦は明日東海道線でいざ東京へ。
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