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2010年1月7日木曜日

人間市場 先輩市篇

私に大好きな先輩がいました。今は秋田に帰って余生を送っています。この人が酒を飲むと一大事、二大事、特大事となります。デザインの天才と酒癖の悪い天才が同居しているのです。何回も警察にもらい下げに行きました。

一、 無銭飲食

一、 不法侵入

一、 下着ドロ

一、 暴力行為

一、 公務執行妨害

つまりは金が無いのに飲んで人の家の庭に入り、そこにかかっていた洗濯物をポケットに入れて出てきた家の人に手を出し、駆け付けた警察官を殴り付ける。それでご留置となる訳です。

次の日は全く青菜に塩、何にもオボエテネエーンダー、イヤ~マイッタマイッタなんて言うのです。でも天才的に器用な人でした。

一度電話が入り、ちょっと来てケロ、どこにいるの?築地の「江戸銀」っていう寿司屋知ってる?ちょっと腹減ってカウンターで寿司食ったらえらい高いんだ。金ねえんだ来てけれ。で「江戸銀」へ。一番奥のカウンターという事は一番いいネタ一番高いとこ、本人はケロッと側の小さな川の流れに泳ぐ金魚なんか見ている。

マイッタマイッタ、東京の寿司はなんて高いの。ウニ四貫、イクラ二貫、トロ二貫、赤身二貫等々、あろう事か伊勢海老の味噌汁も。もう飲んで食べて大ゴキゲン。スマン、スマン、ウマカッタ!幾ら持ってると聞くと小さな財布に四つ折にした千円札が二枚だけ。

ここは高い店なの、この場所は特に高いの、知らねえ~もん、スマンスマンいつもスマン、さっ帰ろうと連れてお支払い。な、なんと2万3200円、これだもんね、さあ帰ろうとお店を出たのが午後一時四十分位。先輩ヨレヨレ。この人には二冊も三冊も小説が書ける位の尻拭いをし続けたのです。いい人なんです、大好きなんです。

ある日電話が入りました。ちょっとある所に来てというかなりヤバイ感じ。千鳥ヶ淵側のホテルのロビー、恐いお兄さんが二人先輩をサンドイッチにしています。俗にいう切り取り屋。銀座のクラブのつけの取立てです。

銀座でも有名でとんでもなく高いクラブ。帰りは大和のハイヤー呼び放題。

溜まったツケが約300万、さあどうするとなったのです。とてもそんな金はない。

そこで私はある提案をお兄さんにしました。毎晩先輩をお店に出します、そして先輩の友人、知人に私がこの状況を詳しく説明してお店に飲みに来る様にします。三ヶ月位で必ずツメます(払う)だから今日はこれまでにしてねと、本当かというから名刺を出し何かあったらここへいつでもと。

次の日から夜になると先輩は二軒掛け持ち、私といえばありとあらゆるルートにハイ出し(出て来い)をかけました。

お店は大繁盛、ボトルキープは来ない内から割当を決めて入れておく。(先輩はそれほど人気者だったのです)オーナービックリ、マスタービックリ、兄さんビックリ、ホステスビックリ大会です。なんと一ヶ月と少しで完済です。

実はこれからの方が大変な事になたのです。ず~っと、ず~っと、ず~っと尻拭いをし続けたのです。でも大好きな人なのです。

1 件のコメント:

sakon さんのコメント...

東本さんにそこまで言わせる先輩に、ぜひ会ってみたいです!