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2015年7月30日木曜日

「誰か物理的に」






昨日午前一時三十分〜二時、NHKで大好きな番組、タイムスクープハンター「戦火の女たち」の再放送を観た。戦国時代の話である。時代考証、キャスティング。
この番組に勝るものはない。

かねがね思っている疑問がある。
どの歴史作家も、歴史家も、学校の社会科の先生も私の問いに応えてくれない。
東京ドーム球場が超満員になっても45,000人位だ。
試合が終わって水道橋の駅まで延々と人、人、人が続く。

新幹線で関ヶ原を通る度に、あの関ヶ原の合戦は話半分、その半分、そのまた半分位ではと思う。東軍10万、西軍10万はあの狭いところに入らない。
鎧兜を身につけた武士、重装備で馬に乗る武士、鉄砲に刀、槍、弓に矢、馬のエサと水は、軍備は多い。

当時の平均身長は155158センチ位。
鍛え抜かれた化け物みたいな武士でも重い長太刀はそうそう振り回せない(まして片手では)。10万人と10万人がおにぎり一個ずつで20万個、たくあん一切れで20万切れ、水一杯ずつで20万杯。鉄砲で撃たれ、刀で斬られ、槍で刺されても即死は少ない。
手を失い、目をつぶされ、足もやられ、傷つき血だらけの武士や雑兵たちはどこへ行ったのか。あっちこっちに逃げ込んだ雑兵たちは何をしたのか。
戦争という狂気の中で何が起こったのか。10万の兵と10万の兵が本当に戦ったのか。
午前中小早川秀秋の裏切りがあり、東軍の勝利でハイ終わり。
後は落武者狩り。私の知る限り、10人と10人が素手で喧嘩しただけでも大変だ。

真説関ヶ原の合戦を“物理的に”考察してほしいと願う。
残念ながら無学の徒である私にはできない。生きている内にぜひ知りたいと思うのだ。
20万人がどう集まり、何を食べ、どう排泄して、どの道具で、どう殺し合い、傷つけ合い、どう逃げ回り、何をしたのかを。

誰か教えて下さい。誰か書いて下さい。誰か話を聞かせて下さい。
刀一本で人間一人斬り殺すのが如何に大変かは刀を持ってみれば分かる。
何しろ重いのだ。馬に乗って刀で斬り合うなんて一分か二分もすれば相方ヘトヘトだ。

私が長い間に観た戦国合戦映画シーンで一番リアリティがあったのは、木下恵介監督の「笛吹川」だ。時代考証も随一であった。
大ファンである黒澤明は「七人の侍」がNo.1だが、野武士たちとの戦いだ。
「乱」も「影武者」も動く絵コンテであった。

私は木下恵介が関ヶ原の合戦を監督したらどうであったかと思いをめぐらす。
撮影は勿論、楠田浩之。皆さん想像して下さい、20万人の人間が移動してどこかに集まり、石ころの投げっこをしたら、チャンバラごっこをしたら、槍の突き合いをしたら(長槍なんかとんでもなく重い)私の疑問は解決しない。
あの頃の鉄砲では急所に当たらない限り何発当たってもすぐには死なない。“講釈師見て来たような嘘をつき”こんな表現もある。歴史小説は嘘をついても許される。
老人、女性、子ども等はあの合戦の日、何をしていたのだろうか。
断末魔と化した武士や雑兵たちを前に。

仕方ないので今年の夏は真説関ヶ原の合戦を追ってみようと思っている。
まずタイムスクープハンターの監督、中尾浩之さんに会いたいと願う。
天才中野裕之監督が確か時代劇を手がけるといっていたのを思い出した。
ぜひ実現してほしい。名作サムライフィクションは斬新であった。(文中敬称略)


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