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2019年7月10日水曜日

「『なんもしない』という仕事」

フジテレビは日曜日午後2時~3時のドキュメンタリー番組と、その後の「みんなのKEIBA」という競馬中継しか見ない。フジサンケイグループの思想が私に合わないからかも知れない。夕刊フジアレルギーになったからかも知れない。7月7日七夕さんの日曜日、翌日は出張なので借りて来ていた7本の映画の残り2本を見て返却しなければならない。10時半頃、チャンネルのボタンをいじっていたら宮根誠司がMCをしているフジテレビの報道番組が出た。私の目に「おっ、なに?」というタイトルコピーが入った。それは「レンタルなんもしない人のなんもしなかった話」そんな内容のものであった。小柄で細い一人の男。30〜34歳ぐらいだろうか。関西の有名大学を出て会社に入り、サラリーマン生活をする。が、ある頃から、“人間は何かしないといけないのか”と言う。素朴な疑問を持ち会社を辞める。そしてネット上に「何もしないけど」みたいなことを発信する。と、次々とメールが入って来る。例えば、一人で散歩するのは嫌だから一緒に歩いてとか、木登りをしたいのだけど一人で登っていると、変に思われるから登るのを見ていてくれとか。何かの行列に一緒に並んでとか。何件も何件も注文が入る。基本的に交通費しかもらわない。職業のようであって、職業ではなかった。ただ何もしないでいるだけの存在であった。男はリュックを背負い言葉は最小限だ。哲学的人生のようだが、そんな大それたものではない。注文は途切れることはなく入る。思わず見つづけてしまった。男には妻と幼い子がいた。マンションの一室に帰ると底抜けに明るい奥さんがいた(顔はボカシ)。何か変だけど仕方ない。今は貯金を少しずつ取りくずして生活してます。アッハハハと大きく笑った。ある出版社が男の日々を綴った本を出版していて、印税が少し入るのだとか言った。いい奥さんを持った男は幸せだ。アクセク毎日働いている私は何をしているのだろうか。一人の若い女性は歩きながら路傍に咲く花を写真に撮る。その日は野イチゴを見つけて、ウワァ〜カワイイと写真を撮る。男は無感情で交通費1200円ぐらいをもらう。ただそれだけである。何かとても大切なものを教えられた。その後「おかえり、ブルゴーニュへ」と「メアリーの総て」を見る。ワイン造りは難しい。父親が大きなワイナリーを持っていたが死んでしまう。男二人と女性一人の兄妹は、莫大な相続税のために苦悩する。中国のことわざに、「死して美田を遺さず」みたいな意味があるのを思い出した。我が子のために財産を遺すべからずと言う。相続税の支払い義務の分担や、少しでも遺った財産を争い合って奪い合う。何も遺さずがいい。古人の教えは、あまたの血みどろの財産の奪い合いを見たから生まれたのだろう。人間は今、これと一緒でないと生きて行けないと、SNSの子分になっている。「何も足さない。何も引かない」。あるウィスキーの名コピーが浮かんだ。(文中敬称略)

 




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