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2020年2月5日水曜日

第17話「私は動揺」

私は「動揺」である。私動揺は昨日夜21時頃発沼津行に乗車した。二ヶ所で人身事故があり、ダイヤは乱れていた。私動揺は21時発の湘南ライナーに乗るつもりだったが、駅員さんに聞くとちょっとまだ分からないんですと言う。ホームには人がズラズラ並んでいた。ソフトバンクの青春放題というデカデカとしたポスターみたいな看板を背にして、二つ空いていたベンチに座った。中国から来る人が激減していると言うが、ホームには中国人の人々が、たくさんいた。待つ事10数分列車が入線して来た。オットマズイいではないかグリーン車の空きが少ない。体は絶対座りたいといっている。扉が開くと、ドドッと人がなだれ込む。大人しそうなオバサンの目は血走っている。超肥満の会社員風が私動揺の前で視界を不良にする。お前何食ってこんなに肥ったのかと聞きたい。当然のようにポテトチップスとサッポロの缶ビールを2缶持っている。グリーン車はその人間の本性を見せる。1000円払って立っているのと、のんびり座っている差はとんでもなく大きい。公務員風の女性は万世のカツサンドとゆで玉子一ヶ、ストライブの入ったカフェオレを持って、ワツサワサと人をどかして、空いている席にスポッと座った。私動揺は空いている席になんとか座れた。通路側であった。窓側にはザ・中国人のお父さん、前の席には奥さんらしき人、そして五歳位の男の子。黒いマスクをしているのだが、前の席から奥さんがニョキと顔を出して、何かよく分からない物を渡す。ラッキョみたいであって、エシャレットみたいである。プーンと酸味の臭い。黒いマスクをアゴにかけてそれを食べる。時々、荒い息となってガチョーンとせきをする。今度は子どもがヒョコと顔を出して、ハイパパみたいに小さな果物を渡す。スモモみたいだ。それをカジカジしながら又ガチョーンと大きなせきをする。その度に私動揺はコロナウイルスのニュースを思い出す。スモモの種だろうか、食べた数だけバックの中から取り出した白い紙に、ブチュ、ブチュとはき出す。私動揺はイライラムカムカと動揺する。他の日本人もかなり動揺している。私動揺は子どもの顔がヒョコと出た時、恐い顔してニラミつけた。親中でも親台でもあるのだが、決して親スモモではない。グリーン券をお見せくださいと、人をかき分けて女性乗務員が来た。オリャ、中国語でスラスラと話しかけているではないか。全然分かんない中国語で隣りのご主人が、早口で自分と前の二人は一緒だと言っていた。どうやら子どもは無料だろうと主張している。女性乗務員もかなり早口になって、身ぶり手ぶりで指三本を立てて、グリーン車は子どももお金いることよと言っている。私動揺の頭の上にご主人の大きな声と女性乗務員の声が交差する。静かにしろとか、ツバを飛ばすなとか、ガチョーンとせきをすんなとかを、中国語で言えないのがもどかしい。チクショウついてネェなと思ったが、私動揺のザワザワはおさまらない。ご主人はシブシブ千円札を出して払っていた。この先前の席から何が出るか分からない。日本経済は、ザ・中国人で持っている。私動揺はかなり冷静さを失いつつあったので、列車が川崎駅ホームに着くと、降りて次の列車が来るのを待つことにした。やけに寒いので階段を上がっていくと、改札口の側に「直久」のラーメン店があったのだ。ごっつい醤油味で有名なラーメンだ。食うべきか、食わざるべきか。私動揺は悩みに悩んだ。 

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