人間は何かを残そうと決意し、行動すると大変な足跡となる。
三十年来の友人を紹介する。
本名は小林直道、我々の仲間内ではピート小林という。
長い間アメリカに居てバーテンダーのアルバイトをしている時に付けられたあだ名と言う。
その時の経験を生かし、サントリーと友人ジョージ伊藤と共に二千種類に及ぶオリジナルカクテルブックをつくった。
レシピとシェイクは全てピートであった。名著中の名著として世界の賞を貰った。又、高名なコピーライターとしてマッキャンエリクソン、博報堂や電通に入社。ジャガーやマッキントッシュ、サントリーの洋酒の広告では朝日広告賞のグランプリを獲った。
180㎝を超える体、口ひげ、ソフト帽それにパイプをくゆらせながらヒョッコリ現れる。ある時はピート小林の英会話術という本を出したとか。春夏の甲子園には必ず高校野球の写真を撮り続けている。
過日は日本中の畑を歩き回り「案山子」の本を出し、TBSのクマグスという番組にV6と共に出てキラキラと案山子について語っていた。
又、日本中の桜の写真を何年もかけて撮影している事は知っていたが、四月四日の日刊スポーツ二十一面一ページに「ピート小林と歩くこころの日本人遺産」今日から連載とあった。撮り者の第一人者としてこれからが楽しみである。
アメリカの文化の中で青春を過ごした男が今、高校野球や畑の中の案山子や日本の桜、古き良き香りが残る木造校舎の四季の中の春を追う旅の枕は時刻表でありボロボロである。
彼も又移り変わる季節の様に様々な人生の四苦八苦を味わった。その上で行き着いた先の目的地がこの滅びゆく日本、去りゆく日本の風景であったのだろう。
先日倒木した鎌倉八幡宮の大銀杏の木に小さな木の芽が出たというニュースを見た。自然の生命力は、なんと逞しいのだろう。あと千年生きれば又あの立派な大銀杏に会えるかもしれない。住む場所を失ったリスたちも又帰って来るだろう。
ピート小林には何とか千年生き続け大銀杏の木の成長を記録して欲しいと思う。
与謝野馨、平沼赴夫、園田博之、藤井孝男等々もう老木となり散り際を作らねばならない男達が新党を立ち上げると言う。新党というより老党である。
政治家の中には煮ても焼いても食えない人間が多い。「老兵は消えゆくのみ」といったのはマッカーサーだが若手に道を空けない老木は朽ち果てるしかない。
かつて、「国や敗れて山河あり」と言ったが今や国滅びて山河消ゆとなって来ている。
童話が生まれる様な景色が消えてゆくのは切なく悲しいものだ。
スペインの養殖で育った大トロだらけのブヨブヨのマグロに105円の値段をつけ解体ショーを見せながら寿司を売る店をお寿司屋とは言えない。
そこに行列を作っている人々を見ると又言葉を失ってしまう。
先日東京湾でアサリ漁をしている老人の話を聞いた。
海も畑も同じ、せっせと水を耕さないと水の中が死んでしまい貝達が死滅していくのだという、しかしそれを継いでいく若者たちがいなくなっている。
何でもいい一人が何かを残す事をしてみよう。一本の木を植える事も、一つの球根を埋める事でも、一枚の写真を残す事でも被写体は何でもいいと思う。
花見に行けなかった人はピート小林の写真集を是非。
「花は根に、鳥は古巣へ帰るとも人は若きに帰ることなし」と記してあった。
0 件のコメント:
コメントを投稿