まず脈を測らせて下さい。それから、ハイ、アーンと口を開けて下さい。
ちょっと目を見ますね、舌を出して下さい。
胸を出して下さい、聴診器を当てますからそして後を向いて背中を出して下さい。
指でトントン、トントンと叩く。お腹を触りますからベットに横になって下さい。
首の回りを触ってくれる。昔はお医者さんに行くと先生が必ずやってくれる手順だった。手の感触が優しく痛かったお腹がそれだけで楽になったりする。
過日私が最も信頼する主治医の先生がこんな事を言った。
この頃ね、私大の医学部の受験が難しくなってしまった。それがいい医師を育てなくなってしまった、試験勉強ばかりしていて答案用紙はいい成績だが、人間が魅力的でないのだ。「病気を診ずして病人を診よ」というのが医師の基本だからね。
問診は一番大切な事。今は先ず採血、検尿、エコー検査や他の検査で患者を診ないで数値だけを見るんだな、前回来た時と今回来た時の顔色はどうか、肌のツヤはどうか、目の色はどうか等の変化を全然診ないんだ、これから日本の医療現場はどんどん非人間的になってしまうよ。研究専門の東大病院なんかは研究だけしておけばいいんだ。
商業的、官僚的、事務的になって行く。始めて解剖なんか立ち会わせると殆どの学生は倒れちまうよ。末期の癌の人の苦痛を毎夜聞いているだけで自分が病気になってしまう様な学生も多い。
外科医はね、救急医を何年か経験しないと一人前にはなれない、両手両足がちぎれている、頭はスイカを割ったみたいになっている、刺されて内臓が飛び出ている、毎日そんな救急の現場を経験して腕を上げ、度胸がついて行くんだ。正確な判断力と勇気ある行動が大事なんだ、絶対諦めない絶対命を守るその気持ちが何より大切なんだ。勉強ばかりしていた学生は使い物にならないという事だよ。
そんな話を聞いた、確かに最近はそんな若い医師が多くなった気がする。一度手術室に運び込まれたらそこは密室、中で何が起きても外からは判らない。手術ミスで命を取られても麻酔が未だ効いていますから、これから集中治療室に入りますから、実は既にこの時仏様になっている。真夜中容体が急変しましたと言われ、誠に残念でした、急変しました等と説明を受ける。こんな事が日本中の病院で行われているという。
手術室の中にいた人間はみんな共同正犯だから秘密は守られる。
私の義兄は八十歳で大手術をした、過去に大腸癌を二度手術している。体力的にも三度目の手術は無理だと思ったが三度目に挑戦した。始めは5時間位で終わるという事であったが、実際は13時間も掛かった。途中医師が追加投入されていった。姉は手術が成功した、やっぱりいい先生だったと手を合わせて拝んだという。私は間違いなく誤診だよ、一千万近く払ったんだから病院の方がありがとうございましたって手を合わせているよと入った。義兄はその後、抗癌剤と戦い大きな体は細く、小さくなり退院して三ヶ月後一月一日の元旦に亡くなった。
病院はしっかり選んだ方がいい、医師は必ず二人選んでおいた方がいい、この人なら、という絶対の信頼をおける主治医を持つといい。先日体調がイマイチだったのである医者に行った。どうしましたと言い、血液検査を進められた。いやちょっと腹をこわした様なので胃薬でも貰えばと言ったらああそうですかと薬を出す指示を、急ごしらえのカルテに書いてくれた。個人病院の中は人で一杯であった。
余程ここはやめといた方がいいよと言おうと思ったが営業妨害で訴えられるのが嫌で止めておいた。
一番素晴らしいお医者さんは、今日診た感じでは二、三日ゆっくり休めばいいですよ、お薬も別にいらないと思います、消化のいいのを食べて冷たくない水分をよく摂って下さい。こんなお医者さん近頃いないと思いますが私の主治医はこういう先生なのです。
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