走る速さと、食べる速さの競争をじっと見守った。
東海道線上り東京行。
私は新聞を読んでいた。列車は順調に横浜を通過した。
11時40分ちょい過ぎ、それにしてもこの日本国はどうなってしまうのか。
いちばん成ってはいけない人間たちがリーダーとなって何もかもが滅茶苦茶、ごっちゃごちゃになって来てしまった。
“シマッタ”こんなはずじゃなかったと地団駄を踏んでも後の祭りだ。
今年も残り一ヶ月を切ってしまった。
仕舞って置いたお年賀の判子が勤続疲労で欠けてしまっていた。
列車は川崎駅に着いた。
ドアが閉まったと思った時ガヤガヤと五十代中頃の女性が二人乗り込んで来た。
ウルサイナ、マッタクと思うと新聞の活字も目に入らない。
私の斜め前に女性は座ると直ぐに駅弁とお茶を出した。
幕の内弁当を一気に食べ始めた。
列車は走る、オバサンは食べる、列車は走る、オバサンは食べる。
アタフタ食べるからご飯はこぼれる。
列車は走る、お茶でご飯を流し込む、次は品川駅だ。
エビフライ、魚の切り身、梅干し、昆布、玉子焼き、食べる、飲み込む、こぼす。
カマボコ、黒豆、列車は品川に近づく。未だ半分位しか食べ進んでいない。
二人は黙々と食べ、飲みを繰り返す。多分品川までには食べ尽くせない。
新橋、東京までに食べると作戦を立てているのだろうなと推理する。
この二人かなり慣れているなと思っていると一人の方がシャックリを始めた。
やはり急ぎ過ぎたのだろうか。箸にはコロッケとおぼしき物を挟んでヒクッ、ヒクッとシャックリをしていた。ニワトリが天に向かって鳴いている姿を思い出した。
朝日新聞に内閣支持率が50%を切ったと書いてあった。
来年の夏頃には40%を切り30%台になる筈だ。列車は新橋に着いた。
私は列車を降りたのだが二人の女声は黙々と食べ進みシャックリは止まってなかった。
トリの唐揚げに箸をグサッと刺していた。
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