「美しくも愚かしいこと」竹林に吹く風は人間の小ささを笑っている。
世界も日本も戦いに明け暮れた時代、藝大を創った岡倉天心はこんな言葉を語り残した。戦っている者同士しばし共に茶でも飲んだらどうだい、みたいなことだろうか。
「美」と「愚」が一つのフレーズの中で見事に融合している。
私たちは日々働いている、その姿は美しい。私たちは日々余計なことを考えている、愚かなことを考えている。あのバカ、あのアホ、あのヤロー、あんちくしょう。
いかなる高尚な人も実は日々愚かなことを考えている。
そこで、あのバカとお茶でも飲むか、あのアホとお茶でもするか、あのヤローとあんちくしょうとお茶でも、と思う心を持つとずい分と世の中はゆったりするはずだ。
私ごとき人間にはそこまでの達観はない。が、それを実践しようと心掛けては来た。
昨年12月26日、やっと30分の短編映画が出来上がった。
みんなでお金を出し合い、いろんな人たちのご協力をいただき、みんなが忙しい中時間を作り合い、牛歩のごとく一歩一歩いろんな映画野郎の才能を得て出来上がった。
青山の編集室でとりあえずの完成試写をした。拍手、拍手だ。
私は映画は「美しく愚かなこと」の代表だと思っている。
絶対に儲からないことを承知で一分一秒も無駄なきようにスタッフや出演者が頑張る、その姿ほど美しいものはない。年末みんなヘトヘト、ヘロヘロなのだが、仕事の合間を縫って集まり、自分たちの手で作った映画に拍手を重ねる。
映画史上誰も考えなかったある食べ物を出す。神聖な食事として。
2月13日、正式な完成試写会をする。そして日本、いや世界の映画界をオドロかしてやる。映画のベースに岡倉天心の名著「茶の本」を生かしている。
皆さまにもいずれ観ていただく機会を作りたい。超低予算映画だが、美しさと、愚かさに満ちている。目茶苦茶に忙しい中でこそ作る意義がある。
私は映画バカになっている時がいちばん精神が安定するのだ。
東京乾電池の名優「ベンガル」さんがシナリオを読んで出演してくれた。
そして信じられない食べ物を日々食べるのだ。