ページ

2012年8月20日月曜日

「八月十九日に想う」



より速く、より高く、より強く、オリンピックはこれが基本であった。
ロンドンオリンピックに日本中が熱帯夜の中、眠らず声援を送った。
その結果メダル数史上最高の38個となった。

だがまてよ、より速くの陸上はまるでゼロ、より高くも全くゼロ、より強くは男子の柔道が全然駄目であった。
つまるところ、走る力、跳ぶ力、投げる力はどんどん世界から離れてしまっているのだ。

近代オリンピックに追加されていったスポーツはほぼスポンサーがついてセミプロ化している。
マラソンの藤原新などは一度勝った位で会社を退社し自らをタレントとした会社を立ち上げ一社ウン千万を集めテレビに出まくりであった。結果はヘトヘトヘロヘロの45位であった。

感動したのは南スーダン出身のグオル・マリアル選手だ。国ではなく五輪旗の下で走っていた。
胸には小さく「IOA」の文字。これは個人参加五輪選手の略だ。没道の大観衆の声援を背に、走り続けた。
完走できてよかった。故郷の現状や世界の難民について人々に考えてもらいたかったという。

内戦の続く故郷で、親族28人が命を失った。自らも二度誘拐され少年兵にされそうになった。
8歳の時、難民キャンプからエジプトに移され、米国で難民として永住資格を得た。
故郷は昨年7月、スーダンから分離、完全独立した。だが国内にはまだオリンピック委員会はない。

完走85人註47位であった。ただ一人で練習をした結果だ。
体協もない、勿論強化費もない。ユニホームには国旗もない。

金メダルは300万、銀は200万、銅は100万とか。スポンサーからうん百万とか、この国は全て金、金、金だ。
走る力、跳ぶ力、投げる力を根本的に鍛え直さないと真のメダルは手にできない。
フェンシング、アーチェリー、卓球、サッカー、バドミントン等が一生懸命メダルを稼いでくれた。
私の金メダルは勿論南スーダンのマラソンマンにあげたい。

そんな中で、こんな記事を目にした。いまどきモテる男は「4低」。
かつてバブル期に沸いた時期は「3高」がもてはやされた。高学歴、高収入、高身長だ。
ところが大震災を境にがらりと変わった。「3平」が人気化した。平穏、平均年収、平凡な容姿だ。

そして今度は、低姿勢、低依存、低燃費だ。
女性に威張らない、家事は女性に頼らない、リストラされない、更に節約できる男となる。
気前のいい男は無駄使い男として駄目男となってしまう。折込チラシをよく見る節約男が、いい男なのだ。
全くこんな男たちから、より速く、より高く、より強くは生まれない。

今回のオリンピックは女性が大活躍であった。世界各国女子選手を強化している。
だが「女性アスリートの三徴」が問題になっている。体操や陸上長距離、重量挙げなど体重制限のある競技では「摂食障害、無月経、骨粗しょう症」だ。
制限によって体重脂肪が減少する、排卵と女性ホルモンの分泌がとまり無月経になるという。
栄養不足は骨密度の低下を引き起こし選手の生命も驚かす深刻な状態となるという。

どうりで女子レスリングの吉田沙保里さんがまるでゴリラに見えた訳だ。
柔道の松本薫さんが狼に見えた訳だ。

本日8月20日、メダリスト達が銀座をパレードしたらしい。
8月9日亡き友の偲ぶ会を無事終え、ずっと封印していた映画を観に行った。
ショーペン主演の「きっとここが帰る場所」、年老いたロックンローラーの心の闇の行き先だ。とても文学的で良かった。

休み中買い求めた古今亭志ん朝のDVD全集をずっと見、ずっと聞いた。
噺のわからない処を教えてくれた友はもういうない。ヒタヒタと友を失った悲しさが身を包む。
私の人生に於いて金メダルの男であった。

蝉が狂った様に鳴いているが、夕方海岸に行くと、トンボたちが風の中を飛んでいる。海の浅瀬にはボラたちが気持ちよさそうにピョンピョンと飛んでいる。夕陽を背に浴びた富士山は丹沢、大山連峰の稜線を従え黒富士となってその美形を誇っている。何があっても一日一日は通り過ぎて行く。

0 件のコメント: