かつてビルマといわれた国、ミャンマーにやり手音楽プロデューサー「ピーター」という男がいた。男は貧困にあえぐバラック住宅の中から5人の女の子を見つけ出し「タイガー・ガールズ」というグループを売り出す。
軍政下の中アレもダメ、コレもダメ、政治的メッセージはもっての外。
オリジナルが創れないから海外のカバー曲を体中を使って唄う。
30〜35歳のピーターは兎に角この5人でひと儲けしたいのだがいくら売りだしても売れない。いちばん期待していたCMのオファーが全く無いので5人をクビにしてしまう。
オーストラリア人の女性で「ニッキー」というプロデューサー兼トレーナーが5人を引き取る。がピーターは「タイガー・ガールズ」の名前とロゴマークを使うな、使ったら訴えると凄む。
ニッキーは35歳位の知的で美人な白人だ。
浅黒い肌を嫌う女の子、平ぺったい鼻が嫌いな女の子、顔の作りを嫌う女の子、まつげが嫌いな女の子、歯並びが嫌いな女の子、何もかも魅力がないわよといわれ過呼吸となり泣きじゃくる女の子たち。
ニッキーは5人にメークアップを、エステを、ウィッグを、ダンスを、発声法を教える。西側の国の女性はパンティラインが出たらダメ、だからTバックをと隅々にいたるまでアドバイスをする。全て自分のお金で。
Why、何故、分からない。貧困から抜け出たい、お母さんを露天商から抜けさせてあげたい、家が欲しい、車が欲しい、美が欲しい。
「タイガー・ガールズ」から「ミャンマー・ガールズ」に名を変えて歌い踊り、そして泣き笑う。10代から20代の5人組、何もかも検閲を受けた旧日本、軍政下と全く同じ。
ある日、ニッキーは5人に自分が妊娠した事を告げる、と同時に米国のハリウッドからオファーがあった事も告げる。
刑務所に入ってもいいからと心に決める5人は隣国タイに行く。
そこでミャンマーにない西側文化に触れはしゃぎ回る。
何かどこかの国に似た様なグループが重労働を課されながら安いギャラで唄い踊っている。その名をAKB48とか乃木坂46という。
ピーターに似ている男を秋元康という。
かつて「女衒=ぜげん」という職業の人間が居た。
貧しい村に行き若い女の子を安く手に入れ、お客をつけて高く売るのだ。
総選挙などというふざけたイベントで女の子同士を競わせ、まるでセリ市の様に観客という買い手を煽る。
作詞は自分でして印税をゴッソリ50年間手に入れ、作曲はコンペで選び作曲料のみ(?)で済ます仕組みだ。あの子には負けたくないという女心と、モテないオレにとって一票入れたあの子はオレの者だという錯覚を大量に生み出す。
秋元康は金を手に入れる天才であり、博打で金を失う天才でもあり続ける。
この一人の天才の下で撮影、衣装、メーク、振り付け、録音、美術等々が一分一秒を切り取ってモザイクの様に作品に仕立て上げる。
ニッキーは身重となりオーストラリアに帰国する。
5人の女の子は名声と富を求めてラスベガスに向かう。
帰国した5人を待っているのは刑務所かもしれないのだが。
日本の政治家は今、総選挙を前にネットを学ぶ。分かんねーなを繰り返しながら。
「いいね!」を求めて。
ニッキーなる女性は一体何を求めていたのだろうか、今もわからない。
これは映画ではなく実話そのものだ。5人の女の子がミャンマーを後にした年、2012年、アウン・サン・スー・チーさんが総選挙で当選した。5人は今どこにいるのだろう。
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