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2013年8月23日金曜日

「サンダル」


イメージです 


新橋駅側に汽車ポッポ(SL)がある。
今ではそこはタバコを喫う人の溜まり場で、SLの煙突ではなくSLの横から煙が立ち上る。見た目堅気そうでうら若き女性もうまそうにタバコを喫い、二つの鼻の穴からブハァーと白い煙を出している。

かつては噴水があったのだが今はない。
噴水の代わりにタバコ好きが煙を噴出しているのだ。

熱闘甲子園が終わった日の夜、朝からアンデルセンで買ったホットドッグとカレーパンしか食べてなかったので腹が減り減りであった。
藤圭子自殺というでっかい文字が新聞売りのところにあった。
で、夕刊紙を買った。

列車に乗るつもりだったが記事が気になり、よしメシでも食べるかと思った。
見れば小諸そばの旗、かつやの旗、豚丼の旗がへんなりとあった。
何にすんべいかと思った。

大和鮨というのが目に入った。鮨は三食でもOKという程好きだ。
何しろ早いのでいい。入った事はないのだが高そうでないので入った。
カウンターだけに15人位は入れるだろうか。二階もある様であった。
入ると見える空き席は五席、入り口に一人、予約席が二席であった。その隣に座った。

左上に小さなテレビがありNHKの首都圏ニュースをやっていた。
冷酒を1合頼んでさあ新聞を読むかと思うと、予約席に三十歳位の男と二十五、六歳の女性が入ってきた。予約している位だからきっと常連だと思った。
お通しに数の子が少々出た。つまみにゲソ焼きにツメをつけてと頼んだ。

冷酒も来た、さあ新聞となったのだが男女がモメている。
男、おまかせは高いよ、上にしようと言っている。
女性が何ケチってるのよ特上にしてよと言った。お前贅沢なんだよと男は言った。
予約しといてみっともないじゃない、ただの上なんて、ただじゃねえよと男が言った。だったら並でいいわよと女性が言った。

板さんおまかせは3200円、特上が2800円、上が2000円、並が1600円だったと記憶している。あんまり言い争うので憶えは定かでない。気が散って新聞を読む気になれなかった。二人が如可なる仲であったのだろうか。
女性はアタシちょっとタバコ喫って来ると言って出て行ってしまった。
男はお茶をアチアチとか言って飲んだ。板前がニタッと笑った。前歯が一本抜けていた。

新橋は会社員たちの夜の王国だ。何が起きても不思議でない。
誰が誰とくっついても何ら不思議ではない。オッセイナあの女と男はつぶやいた。
板前がまたニタッと笑った。

私といえば、まずホウボウを握ってもらう事にした。次に新子とアジ次に海老を頼んだ。女性が帰って来た。二人共上にぎりを頼んだ。よく分かんねえ二人であった。笑いながら話を始めていた。女性は片方のサンダルを足から外していた。左だったか右だったかは忘れた。透明状のバンドエイドが踵に貼ってあったのは覚えている。

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