津軽のミサオさん※日テレより |
津軽に夫婦愛を見た。
サッカー中継によりいつもの週より二時間遅れてそのドキュメンタリー番組は始まった。
六月二十三日午前三時十五分〜四十五分、NTVの長寿番組だ。
タイトルは「津軽のミサオさん」であった。
ミサオさんは八十七歳、ミサオさんの夫は病院に入院している。
ミサオさんの朝は一人だ。
早朝に起きて「笹もち」を作るのだ。一日二百個。
一袋三十キロの米袋を軽々と持つミサオさん。
ミサオさんの笹もち作りは、丁寧を極める。手をかけ、愛をかける。
何もかも一人で作る。こねにこねたあんこもちを山で採って来た笹の葉に包む。
おむすび型にした笹もちをしっかりとせいろで蒸す。
一日二百個を一個百円で売る。
ミサオさんは自転車にヒョイと乗って軽やかにペダルを踏む。
その姿は底抜けに明るく、美しく可愛い。一日全部売って二万円。
でもそのほとんどは材料費や燃料費に消えてしまう。
ミサオさんは愛する夫を見舞いに病院に行く。
九十歳の夫は声をかけても少ししか反応しない。
「ご飯食べましたか」「ウー」ミサオさんは夫の手を握る。
握手しようね、食べないと困るわねーと言いながら手を擦り続ける。
ミサオさんの若い頃の写真を見ると飛び切りの美人であった。
ある日、一日だけ帰宅許可が出てミサオさんの待つ家に、車椅子に乗った夫が帰って来る。子どもたちと孫たちが千羽鶴を何本も作って帰って来る。
小さな家の中に笑い声が弾む。
ミサオさんたちの呼びかけにア・リ・ガ・ト、と言ったのだ。
みんなで拍手!拍手!家の入口のところに太い桜の木がある。
三十年前に夫が植えたのだと言う。
雪深い時、ミサオさんは雪かきに追われる。
ある日七百個の笹もちを作って、3.11で被災した越前高田の高校に持っていく。
私には何もしてあげれないとミサオさんは泣く。せめて笹もちでもと思って学校に行く。おいしい、おいしいと生徒たちは大喜びだ。
おばあちゃん、かわいい〜と口を揃えて生徒たちは言う。
その年、春四月桜の木に満開の花が咲く。
ミサオさんはお寺に行ってずっとお経をあげる。
その次の日、ミサオさんの愛する夫は九十一歳でこの世を去る。
ミサオさんは笹もちを作り続ける。
私は九十六歳でこの世を去るまで明るく元気で、すこぶる働き者だった母親を思い出した。消費税は福祉のために使うと言っていた筈だが、次々と老人イジメの法案を繰り出している。サッカーなら反則、レッドカードで一発退場なのだが、今の日本にはレフリーがいない。守るべきルールさえなくなって来た。
ミサオさんの笹もち、一個百円は消費税込みだった。
1 件のコメント:
同じ津軽なので見ようと思っていたのですが
見損ないました。早速再放送予約しました。
楽しみです。
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