「近親憎悪」兄弟姉妹とは何か、この頃ずっとこのテーマの問題を抱えている。昨夜日本映画の最新作で出色の作品を見た。とにかく脚本と編集が、抜群であった。2018年東映ビデオ製作(製作委員会の幹事だと思う)作品名「犬猿」脚本・監督「吉田恵輔」。男二人の兄弟がいる。兄は体中に刺青を入れ、街の不良やヤクザも、その名を聞いただけで逃げ出すほどの凶暴性がある。刑務所から出所してきて弟のアパートに住む。弟は真面目で一途な小さな印刷会社の社員である。父と母は別のところに住んでいる。弟の印刷会社の下請けの、小さな印刷会社を経営している。姉妹がいる。姉は太っている。会社を切り盛りしながら、父親の介護をする。食事作りから洗濯、ぬか漬け作りまでする。父親は下の世話をしてくれる姉の胸を触ってしまうほどボケている。丸太のような体を忙しく使って会社と家を守る。妹は、姉の下で働いているが身は入らない。姉と違ってスレンダーで美人であり、モデル会社に登録してタレントか女優を目指している。姉はヤクザな兄の弟が仕事を発注に来てくれてから、二枚目の弟に強い恋心を持つ。 が、しかし弟は妹の方と付き合い出す。ヤクザの兄は相変わらず暴力三昧である。いいシノギがあると脱法ドラッグの販売を始める。稼いだ金で父と母のローンを払ってやり、マッサージ機を買ったりしては、父と母を心配させる。(一体何をやって稼いだのだ、また刑務所行きだろうと。)一方姉は弟への恋心を募らせるが、妹と深い関係になったことに猛烈に嫉妬する。兄の暴力に手を焼く弟は、頼むから死んでくれよと願う。妹に私のことが好きなのよと言われた姉は、いよいよ嫉妬に狂う。この2組の兄弟姉妹の感情の動き、いろいろ起きることを同時進行的に見事に編集する。ある夜兄は3人の男にアパートに踏み込まれ刺されて重傷を負う。弟は一度はこのまま放っておけば死んでくれるとアパートから逃げ出すが、やはり兄弟なのか救急車を呼ぶ。妹は実はデリヘルとかAV女優をやっている。自分の恋する弟へ何度もメールをする姉を、バカにして弟に近づくなと言う。姉はついにリストカットして救急車で病院に運ばれる。そこに刺された兄貴も運ばれてくる。傷が治った兄は刑務所へとなる。姉は腕にリストバンドして仕事に復帰する。見捨てようとしてゴメンと謝る面会に来た弟、俺たちガキの頃仲良かったなと言う兄、傷が治った姉にパソコンの使い方やら仕事の進め方を習い始め、姉にゴメンネと謝る妹。がそれらの心はホトボリが覚めたら、すぐ元に戻ってしまう。テメェブッ殺すぞと言う兄の弟への目、あんた全然頭の中カラッポで使えないと言う姉の目、それに対し憎悪の目をする弟と妹。犬猿の仲をこの作品は見事に描いた。2組とも幼い頃は仲良く遊ぶ仲であった。兄貴役の新井浩文が素晴らしい演技であった。さらにその上を行ったのが、私は名を知らない。丸太のような体に黒いメガネをかけた俳優さんだ。日本の映画界に「吉田恵輔」がいることを記憶しておいてほしい。兄弟姉妹、同じ親から出て憎しみ合う、つまり「犬猿」の仲である。ぜひ見て欲しい本年度NO.1の映画だ。東映ビデオ恐るべしだ。あなたの兄弟姉妹は仲がいいですか。
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