1982年頃、レバノン戦争があった。その年に生まれた赤ちゃんは、36歳位になっている。昨夜写真家の永石勝さんと赤坂で食事をした。永石さんは天才中野裕之監督の友人であり、私の大先輩である元東急文化村の社長田中珍彦さんの友人でもある。大切な資料を借りていたのをお返しに行って食事となった。中野裕之さんは布袋寅泰と奥さん、今井美樹さんのPV(プロモーションビデオ)を手掛けている。中野裕之さんは日本の音楽界で、世界に対抗できるPVを創り、その世界では「神」に近い存在である。先日中野さんと食事したんですよ、いや、すごいのなんの、 古代史から宗教史、地質学、中世史から大宇宙論まで、話をしてくれましたよ、そうですかやっぱり物凄いですよね、と永石さんが言った。 私はそれを書こうにも浅学のために書けないのである。永石さんは一昨日千秋楽を終えた「オセロー」の公演のポスターや、 すばらしいブックを撮影、デザインをしていた。歌舞伎界の役者さんも多く撮影している。美意識が何しろハンパでない。私が「あかるい鬱展」をやった時、素晴らしい作品を創って協力してくれた。女性にモテル見本の人である。そうだレバノン戦争について書くことにする。昨夜永石さんとサヨナラをして家に帰って、「レバノン」という、映画を見た。午前1時から2時半まで、90分の映画、戦争映画の名作である。 玄関に入ると、愚妻が借りといたわよ、とひと言、言った。メモに書いて置いた「レバノン」を借りといてと。メモが会話である。戦車の中でシリア兵と戦う、市街戦の怖ろしさを、ほぼ戦車の中のクローズアップの顔と目の動きと、戦車の中から見る敵と十のマークのような照準の先で、戦争の凄惨さと恐怖を表現する。ギュイーン、ギュイーンと照準を動かす音がずっと入る。戦車の中からテロリストが車で迫ってくるのを撃つ。ふっ飛ぶ車、手足がちぎれ飛ぶ民間人、逃げまどう数十羽のニワトリ、5歳の娘が犠牲になり、泣き狂う母親。着ている服が千切れて全裸になってしまう母親。汚れに汚れた下着だけだったが、それも千切れてしまう。テロリストか民間人か、恐怖の中で見分けがつかない。照準を見ていると、自分に向かって敵の撃ったロケット弾が近づいて来る。ドカ〜ンと来た、5人は正常でなくなって行く。戦車に命中したからだ。顔は黒く汚れて見分けもつかない。目玉だけがギョロギョロ、どアップで動く。家に帰りたいという男、ここはどこだという男、死にたくないという男、そんな中で一人の男が、ポツンと話し出す。「高校生の時父親が死んだ。学校の先生が、しっかりすんのよと抱いてくれた。体に乳の感触が伝わった。先生はやさしく抱いて励ましてくれた。体は乳の感触に反応してボッキしてしまった。先生はきっとそれに気づいていた。そして抱きしめつづけてくれた。父親が死んだというのに、高校生だった俺は、射精してしまった。それで悲しみが消えてスッキリした。戦車の中男たちは、話を聞いているだけ感じてしまうよと言った。本当の話か恐怖で狂ってしまったのかはわからない。「レバノン」、ぜひオススメです。戦車にはこう書かれていた。「人間は鋼、戦車はただの鉄」司令塔から無線が入る。シリア兵にすっかり囲まれているぞ。そして・・・。戦車はとてつもなく怖ろしい。
0 件のコメント:
コメントを投稿