ページ

2010年10月28日木曜日

湘南の嵐便り 「孤舟」

いやはや切なく悲しい本を読んだ。
渡辺淳一の「孤舟」だ。

渡辺淳一 孤舟

大手広告代理店の役員だった主人公が社長一派に入っていなかった為60歳で地方に飛ばされる事になる。プライドの高い主人公はそれを断り定年となる。退職金と企業年金も貰って。

今までは朝から深夜まで仕事仕事であった。
これからは妻と一緒にバラ色の第二の人生と思っていた。だがしかし現実は全く違っていた。


先ず早起きしても行くところがない、やる事がないという現実に慌てふためく。
朝から晩まで家に居る夫はアレコレ細かい事に口を出す。やたらとご飯はまだかと腹を空かす。妻は習い事や友人との交流で結構忙しい。
全然相手にしてくれなくやる事がないという地獄にあえぎ、傷つき、苦悩する。




妻から貰う小遣いは5万円だ。月収200万近くあった給料はもう入らない。娘は26歳、息子は25歳それぞれ外に出て行ってしまう。妻は「主人在宅ストレス症候群」に罹ってしまう。仕方なく外出するが行き先はない。道を歩いていると元居た会社の人間に会うのではという気持ちが支配する。

囲碁教室に行くと嫌なジイさんにコテンパンに負ける。就職活動をするがかつての高収入、高学歴がジャマになって見つからない。月収20万とかつての10分の1のビル管理会社も採用してもらえない。

妻は洗濯物を入れてとかお風呂を掃除してとか自分の事は自分でやってとかいう。
二人で旅行でも行こうと言えば嫌ですかえって疲れるからと言われる。
自分で何かする事を見つけたらと追い込まれいよいよピンチだ。
図書館に行っても落ち着かない、俺は孤独なんだと実感する。


つまらないプライドが第二の人生をつまらなくしているのだ。


私は若い頃会数年社勤めした経験があるがまるで駆け出し、出世競争とはこんなにも男にとって命懸けなのか、私も12時前に帰宅する事はまず無かったが愚妻はソファーに猫の様になって私が帰るまで待っていた。


一人で会社を立ち上げたので未だに上司もいないし出世も関係ない、優秀なスタッフにおんぶにダッコちゃんなのだ。

で、孤舟の主人公はやがてデートクラブに登録して若い娘と出会う事となる。
その後が知りたい人は買って読んで下さい。「孤舟族」はどんどん増えているのです。




公園で孫といつも遊んでいる、犬の散歩係を命じられている、スーパーやコンビニで買い物をメモを片手にマッタリ行っている、いやはやガックリしています。先は長い。

0 件のコメント: