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2015年10月27日火曜日

「行きづらい映画館」






「シキテンを張る」「シキテンを切る」ともいう、ある社会の用語だ。
その意味は、「見張る」ということ。
オイちょっとシキテンを切ってろとか、誰かが来るかもしれねぇからしっかりシキテンを張っておけと使われる。

私たちは今そこいら中でシキテンを切られている。
監視カメラという機器に。私たちは一歩家から出ると見張られるのだ。
歩いていても、走っていても、その途中でトイレに入っても、レストランやそば屋さんの中でも、ありとあらゆる所で。

東京渋谷宇田川町は有数のラブホテル街だ。
その真ん中にユーロスペースという名作を上映する映画館がある。
当然そこいら中に監視カメラがあり、映画を観に行っても、もしかして本当はラブホテルへと疑われる。
ユーロスペースに映画を観に行く時は、誰かにハッキリと何の映画を観に行く、一人なら一人でと、二人なら誰と、何時何分の回に観ると高らかに宣言しておく必要がある。

私◯△×□は本日ユーロスペースに一人で行きます。
名作◯△を◯時△分から観て◯時△分に終了、その後宇田川町を抜けて東急文化村入り口方面に向かいます。途中キンキンギラギラのラブホのネオンがありますが私には全く関係ありません。映画の途中に抜け出してシンネコ(内緒)でラブホに入ったりしません。

私の全ては監視カメラがシキテンを切ってくれています。左を見ても、右を見ても、上からも、斜めからも、下からも見張ってくれている。
ユーロスペースは主に単館上映観たい映画が多いのだがそんなわけで近づけないのだ。
いい映画やってんだけどなぁ〜。

刑務所から無実を訴えていた夫婦が二十年収監されていた。
大阪高裁が検察の異議を棄却した。
放火殺人で無期懲役を受けていた夫婦が釈放された。
日本では一度高裁で刑が確定した者が再審に持ち込めるのは、針の穴にラクダを通すほど難しいとされていた。
モノは考えようである。
今では監視カメラのおかげで無実を証明できることになったりしている。

「猫は知っていた」確かそんな映画があった。
家の中の出来事は猫はしっかりシキテンを張って見ている。
猫は決して騙せない。
猫派が犬派をついに追い越したらしい。
その主な原因は散歩が大変だから。そういう事なのです。

知り合いに警察関係の人がいる。
一度捕まえた人間は何が何でも犯人にする、それが警察です。
怖ろしい人間たちなんですよといった。くれぐれもタクシーに乗ったら領収書を、映画を観たら半券を、アリバイ証明のためにとアドバイスされたのを思い出した。

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