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2016年3月23日水曜日

「個室の思い出」



三十代の頃の事で年月日は正確に覚えていないがその時の切迫したやりとりは忘れられない。目白駅のトイレの中での事だ。

朝八時半頃私は小用をするためそこに行った。
トイレの中は混んでいて小用をするにかなり並んだ。
右に小用があり左に大用が四つ五つであったと記憶する。
ある高名な漫画家さんの仕事場が目白駅側にあり原稿を受け取りに行った。

で、トイレの大用には三人並んでいた。
その中に五十代中頃の紳士風然とした人がいた。
三番目に並んでいたその人は随分とアブナイ状態だったのだろう。
自分の前の二人がすんなり出て来た人と入れ替わった。
が、その後大用の扉はなかなか開かない。

こりゃ何やってんだ早くしろと大声で叫んで扉に思い切り蹴りを入れた。
ガーン、ガーン、人の事を考えろ、いつまで入ってんだ、バーン、バーンと空手チョップを入れた。着ていたスプリングコートの裾が大きく揺れた。
多くのギャラリーが用をしながら、あるいわ並びながらそれを見ていた。
紳士(?)の声が震えていた。

そしてまた、早くしろ!と怒鳴った時、中から若い男の声で、いま出ますからそこを離れてください、とやはり震える声で言った。
何言ってんだ、離れられるかと怒鳴った。

私たちギャラリーはもうこの人はアブナイ出てしまう、つまりもらしてしまうと覚悟した。と、その時前に入った人が気を利かせたのか、アッサリと出すものは出したのか扉を開けて出て来た。紳士(?)はおっ、天の味方とばかりに一気に大用の中に入った。
若い声の主がそっと扉を開けて出て来た。
トイレの中はホッとした空気が流れ固唾を呑んでたギャラリーはそれぞれ次の行動に移った。短い様であり、長い時間でもあった。


昨夜家に帰り東京新聞の夕刊を読んだ、そこに、トイレ習慣に変化/「座り男子」外でも急増/の大見出し、中日本高速道路、SAPAの個室増設と横見出しがあった。
半面近い大きな記事だった。座り派が多くなった。個室の中でスマホをいじるからだ。
勿論「尿が飛び散らない」というキレイを求める人が多い。

ある調査によると洋式に座って小用を済ますが33.4%とか。
年々トイレが近くなるのは私だけではあるまい。トイレに座り込んでiPadで本を読んだり、スマホでラブコールなどはやめていただきたい。

もし私が目白の紳士(?)のようなケースになったらそれは想像におまかせする。
記事を読んで思い出したトイレの落書がある。
ナンベンワナンベンモデル。

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