松方弘樹さんがかなり厄介な脳リンパ腫であるとのニュースに接した。
早朝四時三十分鎌倉七里ヶ浜の海岸である作品の追加撮影のために、海岸側のセブンイレブン駐車場に集合した。
風はなく、波は静かで空には美しい三日月があった。
右方向に江の島の灯台の灯りが規則正しく回っていた。
松方弘樹さんのことを思い出した。
数年前、自主映画に松方弘樹さんがノーギャラに近いようなものなのに快く出演してくれた。共演は松雪泰子さん、伊吹剛さん、村上淳さん、主役は新人の小林成男さん、題名は「灯台」江の島の灯台が舞台であった。
監督、撮影は中野裕之さんであった。
松方弘樹さんは朝から深夜まで嫌な顔を一つもせず、いいね、映画は、いいね、映画屋はと協力をしてくれた。とにかく映画少年であった。
大スターなのにそれらしい態度は一切なし、大好きな釣りの話をしてくれたり、東映映画全盛時代の話をしてくれた。
ずっとチューインガムを噛み、本番になると口の中の上の部分にピタッとくっつけた。
映画が好きで好きでたまらないと言った。
短編映画「灯台」はテヘラン映画祭、クラクフ映画祭のインターナショナルコンペティション部門にノミネートされた。
その撮影後ニュースで松方弘樹さんが300キロ以上のマグロを釣ったということを知った。御祝の花を事務所に送った。松方弘樹さんから電話があったというので、すぐに聞いていた番号に電話をした。ハイ、もしもしと松方弘樹さんの高音が出た。
お電話をいただいたようですが、今どこですかと聞くと、花ありがとう、今ねえ島取の沖の舟の上だよと言った。マグロを追っていた。
釣りと映画を語るとき、松方弘樹さんは本当に少年になった。
大好きな松方弘樹さんがきっと元気になってくれることを祈っている。
そしてまた、でっかいマグロを釣り上げてくれる姿を見せてほしい。
いい映画、いいドラマ、いい舞台を演じてほしい。全国の松方弘樹ファンがついている。きっと治ると信じている。
朝、遠くに灯台の灯りを入れながら狙い通りのシーンを撮影した。
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