ある年まで私は領収書をもらうという習慣がなかった。
今から思えば実に放漫な事であった。
飲み屋さんとか食事をする処は決まった処にしか行かないので殆どツケであった。
またツケが効かない地方などではカードを使っていた。
男子たる者が領収書を下さいというのがどうしてもいえなかったし、全く経験がなかった。こんな事が許される程世の中は甘くない。
「なんで領収書がないんですか」
「男がいちいち領収書をもらえるか」
「そんなのは通らないんですよ」
「だったらどうだっていうんだよ」
「全て使途不明金として課税対象にします」
「何が使途不明だよ、ちゃんといってるだろう」
その年初めて税務調査というのを受けました。
正直マムシみたいな嫌な男でした。ネチネチ私は攻められイライラは頂点に達してました。
「お前男のくせしてこんな仕事して楽しいか」ときけば「楽しいですよ自分で選んだ仕事ですから」「お前嫌な奴だなマッタク」そういいました。
相手は京橋税務署の調査官という職業の男です。
年齢は40〜50位でした。典型的小役人という感じでした。
その頃は未だ会社の経理体制もしっかりしておらず、空き缶みたいな四角い箱にお金を入れておいてそれぞれ必要なら持っていけみたいだったのです。
民商という共産党の経理事務所に全てお任せでした。
ところがこの事務所のスタッフが私よりズボラで大放漫でした。
「10円でも会社の経費は領収書がないと駄目なんです」とキッチリ叱られました。
「お前トコトン嫌な仕事しているな」と憎まれ口を叩いて席をたちました。
で、当たり前の様に法のケジメをつけられました。
全然儲かっていないのにシッカリ税金を取られました。
それでも領収書をもらう習慣はつかず今でも苦手中の苦手です。
亡き親友が一緒にタクシーにのって降りる時に私が領収書いりますかと聞かれた時、いるよといったら、イケマセンアナタハ領収書なんかくれというコトバを出してはイケマセンと言われました。ダヨナァ〜、ダヨネェ〜となったのですが、今はそんな訳にはいきません。
早く領収書を必要としない身になろうと切に希望しているのです。
夢の実現まで慣れないコトバを積み重ねるのです。
男としてはもう終わっているのです。
「おい領収証出せや」
「俺の辞書に領収証はネエんだヨオ」なんてタクシーにの運転手をからかってしまったら本気で怒られました。交番行くぞだってさ。
スミマセンでした。領収証いただけますか。
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