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2013年7月23日火曜日

「仲良い恋人」


原美術館

坂田栄一郎氏「江ノ島」


JR品川駅から車で五分ほどの住宅街の中に「原美術館」はある。
東京ガス会長、日本航空会長、帝都高速度交通営団(現営団地下鉄)総裁などを歴任した実業家、原邦造氏の邸宅であった。

瀟洒な建築は上野の東京国立博物館本館や銀座和光本館の設計で知られる渡辺仁氏の設計による。昭和十三年に竣工された。
当時の実業家は芸術をこよなく愛しコレクションした。

私の敬愛する写真家、坂田栄一郎さんが十数年にわたって夏の江ノ島を探求し続け、「人のいないポートレート」を中心としたシリーズ「江ノ島」を初公開した。
作品の数四十点、ポートレート約十点が原美術館とベストマッチしていた。

レセプションには日本を代表するアーティストやクリエイターがギッシリ集まった。
坂田栄一郎さんといえば愛妻光豆さんが必ず側にいる。
仲良い夫婦であり、仲良い恋人同士の様でもある。
オシャレで可愛い光豆さんは作品を作る上で大切なパートナーでもある。
重いカメラや機材を担いで砂浜の上をずっと歩いたそうだ。
私たちが十代だった頃、江ノ島は憧れの地であった。

世界中の重要人物の内面を一瞬にして切り取る雑誌、AERAのポートレートはあまりに有名だ。旬な人間の旬な内部を一瞬で写しだす。
その鋭い感性とは全く別のもう一人の坂田栄一郎さんのカメラセンスの世界がある。
坂田栄一郎さんの中に生き続ける二十代の感性だ。

今時砂を被った言葉に「青春」という二文字があるが、作品の中に少年の目、少年の心、青春の脈拍がドックンドックンと聞こえてくる。「人のいないポートレート」はそこにいたであろう人々を連想させる。
ブライアン・ハイランドの「ビキニのお嬢さん」という曲が聞こえて来る。
パット・ブーンの「砂に書いたラブレター」とかビーチボーイズが。

江ノ島は江の島とか江島とも書くが、この写真展にはやはり「江ノ島」がいい。
二十代そこそこの若者たちの写真も実にいい。目が汚れなく澄んでいる。
この被写体になった若者たちは、今四十代になっていると聞いた。
優れた写真家の感性は、赤いスイカに刺さった二本の煙草も、会社員が脱いだであろう一対の革靴も冗舌に言葉を発して来る。

九月二十九日(日)迄、ぜひ観に行ってほしい。
きっと少年時代の淡い恋を思い出すはずだ。今江ノ島は夏真っ盛り。
私は休日の度自転車でクルージングをしている。
マックバーガーを食べながらサイクリングロードにいたら、いきなりトンビの野郎に持って行かれちまった。この間は崎陽軒のシュウマイ弁当だった。
トンビの狙いは油揚げだけではない。

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