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2013年7月19日金曜日

「絶句」




人間はびっくりした時にはビックリしたなあと言う。
凄くびっくりした時にはもの凄くビックリしたなあと言い、更にびっくりすると言葉を失ってしまう。

敬愛する映画監督中野裕之さんから、七月十八日平日ですけど見ると大変興奮する男子新体操のチケットを送ります、面白いから見て下さい。と二枚のチケットが送られて来た。

七月十八日(木)、国立代々木競技場第二体育館で私は言葉を失った。
青森大学男子新体操部のあまりに美しく、あまりに見事な演技にだ。
この大学は全日本選手権、四年連続九度の優勝を果たしている。

女子に比べ男子新体操は未だ普及率は高くない。私も知らなかった。
はじめにビックリしたのは三千人収容の会場が超満員、大行列。
百人近い会場スタッフは皆イッセイミヤケの素敵なTシャツ。
なんだこりゃと競技場を見ると真っ黒い円形のコロシアム。
その真中に黒く四角いマット(様々な色に変化する)。照明がタダ事じゃない。

次にビックリしたのがお客さんたち。
私は、きっとジャージ姿の学生客はゼロ、皆ファッションがユニークだ。
イッセイミヤケ風とミヤケ的。
まるなんかが殆どで、笛や太鼓や旗振りまくりを想像していた。が、そんなおでファッションショーだ。


次にパンフレットを見てビックリ、その参加メンバーは、世界を日本を代表するトップクリエイターばかりではないか。
クリエイション・ディレクションDaniel Ezralow、ライティング海藤春樹、モーショングラフィックス中村勇吾、ミュージックOpen Reel Ensemble、ミュージックスーパービジョン畑中正人、ドキュメンタリーフィルムディレクション中野裕之、ヘアメーク資生堂SABFA、コスチュームHOMME PLISSE ISSEY MIYAKE、企画・コスチュームデザイン三宅一生、とズラリ勢揃いだ。

三宅一生さんが青森大学新体操部の演技を見て素晴らしいといい、企画をしたと聞いた。東北の復興のためにも。二十七人の男子の新体操は、もはや体操というより舞踏劇に近い。

選手たちは体操着ではない。
イッセイミヤケオリジナルユニホームの青い服、赤い服、灰色の服が飛翔し、超回転し、疾走し、山となり、海となり、花となり、水彩画の様になり、水墨画となり、真っ赤な血をマットの上に照らし出す。
一本の縄、二個の輪、一本のスティックは魔法の動きを見せる。
漆黒の闇の中で忍者の集団の如く、妖しく、激しく、華麗に集結と飛散を繰り返すのだった。時にはソロで、時には五人で、七人で、十人で、二十七人で。

いやはや驚きの連続であった。
カメラマンの数が多く、中野裕之さんが見つからなかった。
きっと中野裕之さんの事だから思いもよらぬ所でカメラを回していたのだろう。
哲学的ミュージック・ビジュアル・ファションエンターテイメント新体操劇きっと世界中に広がるだろう。ビックリしたなもうと何度も呟きながら会場を後にした。

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