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2014年12月9日火曜日

「ヤキを入れる」




12月のポストには「喪中につき年末年始のご挨拶を失礼させて頂きます」という葉書が一日何枚か入って来る。
このようなご丁寧な習慣はきっと日本だけではないだろうか。


私は一年の内で12月がいちばん嫌いである。
何故なら人の死の便りに多く接するからである。

107歳で祖母を亡くしましたのお知らせにはよくぞ生きましたね、すばらしいの言葉をかける。
若い頃いろんなことを教えてくれた先輩の死には、あれだけ酒飲んでいて79歳。先輩やっぱり東京から離れてよかったね、と声をかける。

若い頃ハイミナールという睡眠薬中毒で一日中ラリって煙草の火を体中につけていた後輩が66歳で死んだ。私は睡眠薬をやる後輩を治させるために何度もその身を拘束した。
いつ死んでもおかしくないような男だったが一人の女性と知り合いハイミナール中毒を克服した。オイ、実はオレは今睡眠薬を飲まないと眠れない不眠症だと葉書に向かって苦笑する。

人生とは皮肉なものだ。
後輩や仲間をハイミナール中毒から守るために泣き泣きヤキを入れていたのに。
私は私にヤキを入れなければならない。後輩ほど可愛い者はいない。後輩を守るためにどれだけ体に傷を残しただろうか。

12月のポストにはBARやクラブのXmasパーティのご案内が入って来る。
むかしはよく顔を出したものだがこの頃は殆ど行かない。

今年の12月のポストには政党の葉書が入って来る。 
1214日赤穂浪士が吉良邸に討ち入りした日に投票がある。
エイエイオーと討ち首をあげる者あれば、奮戦するも討ち死にした者のドクドクと流れる血の音がするはずだ。武士は大義に生き、大義に死ぬ。
大義なき選挙で職を失った人の葉書はきっとお正月に来るはずだ。

♪〜もういくつねるとおしょうがつ。
生きている内に年賀状書きを始めねばならない。ポストほど人間のドラマが入って来るところはない。手書きで書かれた文字ほど人に伝わるものはない。

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